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第21話 健全で打算的な日常_3

 「フラ・・・、えーっと。もう一回名前教えて」


 俺は宮瀬の肩に手を回し、媚びるようなか細い声音で懇願する。


 「フランソワーズ・サガン」


 「代表作は?」


 「『悲しみよこんにちは』かな」


 「・・・あらすじは?」


 「図書館の入り口近くの本棚に、文庫本が置いてあったよ」


 宮瀬は細いストローからカフェインを摂取しながら、薄く微笑んで図書館の方を指さす。


 「読書は嫌いなんだよ」


 「じゃあ、ウィキペディアで概要くらい読みなよ」


 宮瀬は呆れたように笑い、首に回された俺の腕をやんわり振り払った。


 あの日、自分は窮地に立たされると、意図しないことを口走ってしまう人間であるという事実を知った。好みの異性に少しでもよく見られようと、舞い上がり追い詰められ、咄嗟に安請け合いをする癖はみっともない。けれど、その欠点のおかげで彼女の連絡先を入手することができた。


 短所は長所にもなり得るのかもしれない、という希望も一緒に学んだ。


 「やっぱり可愛いかったんだよなあ、唯ちゃん」


 十七歳の春。内省的で深慮な思考は、長くは続かない。年相応の短絡的な言葉が口から洩れた。喧噪に包まれる中、ひとり静かに目を閉じる。


 セーラー服からのぞく白いふくらはぎが、瞼の裏に浮かんでは消えてを繰り返している。

身近に楽しみがひとつでもあれば、世界はきっと華やいで見えてくる。

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