第20話 健全で打算的な日常_2
「結論が見えない」
遠回りな話し方に、俺は少し眉を顰める。宮瀬は俺に視線を向け、淡々と話を続ける。
「分かりやすい清楚さって、結局計算で出来上がってるんだよ。顔も中身も、見えてるものが本物だとは限らないの。航大には、まだ理解できないだろうけど」
この顔に落ち着いた性格の宮瀬は、運動部のキャプテンと肩を並べるほどモテる。残念なことに、良くも悪くも平凡な俺と違って。
廊下の壁にかかった時計を、ちらりと見やる。放課後まで、あと五時間。
「仮に本心が違ったとしても、俺にそういう清楚な態度を取ってくれればそれでいいの。結局、見えてるものしか知り得ないんだし」
聞きかじった御託を並べる。強がりを口にしても、宮瀬の一見理にかなった説明に惑いが生じ、語尾がだんだん小さくなっていく。
昼休みが始まり、友人数人と一緒に弁当を食べた後、「コーヒー牛乳が飲みたいから、売店についてきてよ」と宮瀬が俺に言った。人混みを嫌う宮瀬が、いつも混んでいる昼休みの売店に誘うなんて珍しいとは思っていた。他の友人を誘わなかったのは、このことが聞きたかったからだと今更気づいた。
「まあでも、感情が理屈より優先するのが青春だからね。いいんじゃない? 玉砕するのも、きっと青春だよ」
「ふられる前提で話進めんなよ」
鼻で笑う宮瀬から視線を逸らし、何の変哲もない青空を見つめる。とりとめのない邪まで婉曲した思考が、頭の中を埋め尽くしては消えていく。
「とりあえずさ。フランソワーズ・サガン、頑張って読みなよ。昔から大好きなんでしょ?」
宮瀬がコーヒー牛乳の紙パックにストローを突き刺しながら、くすくすと笑う。俺があの日、咄嗟についてしまった嘘を、無意味な見栄を、快活にあげつらう。
250mlくらいの紙パックの甘いコーヒー牛乳、すごく好きでした。




