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第2話 彼女が来るまで、あと二分

 凡庸に廃れた駅の改札を抜け右に曲がれば、褪せた看板が商店街のはじまりを告げる。民家の一階を商店とする横並びの店舗はどれもガタが来ていて、壁もトタンもポスターも、滲んで剥げて褪せていた。


 昼間からシャッターを閉じている店も、電気が点いていない店も、置物のように座る家主がぼんやり車道を見つめている店も、すべてに過去の方向を向いている。




 二十軒ほどの商店街の中で、春夏冬商店は駅側の入り口から数えて三つ目。クマさんクリーニング店、戸田理容室、河津桜商店駅前店。


 大きな河川のないこの地域に河津桜はないけれど、「河津桜商店」。由来を聞こうと何度もい思って、いつの間にか忘れてしまって聞きそびれている。多分一生、回答を得ることはないだろう。


 ちなみに駅前店というけれど、これまでの十七年の人生で支店を見たことは一度もない。


 「いらっしゃい。いつもより早いね」


 「こんにちは! 今日は早めに授業が終わったんです」


 河津桜商店の店の前に、商店街の入り口から押してきた自転車を停める。スタンドを立てる音に気付き、入り口付近のレジの椅子に座ってテレビを眺めていた店主のおじいさんが顔を上げた。


 皺だらけだけど血色のいいおじいさんが、商売人らしい愛想のいい笑顔を俺に向ける。


 「元気だねえ。若いから毎日楽しいでしょ?」


 まだ五月なのに、自転車を急いで漕いできたせいで、うっすらと額に汗が浮かぶ。切ったばかりの前髪が湿り、貼りつく。背中も蒸れている。


カッターシャツの袖で額を拭う。白色の生地が、ゆっくり透明に変色する。


 「はい! おかげさまで」


 「おかげさま?」


 昭和のB級ドラマ出てきそうな鄙びた軒先の入り口で、白猫が腹を見せて眠る。

個人商店、大好きです。

祖父母が自営のお店をしていたこともあり、憧れと懐かしさとロマンをとても感じます。


年々減ってきてはいますが、今でも近くの商店に立ち寄って買い物を続けています。

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