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第18話 散りゆく桜と女の子_3

 「綾乃のお友達?」


 ひょっこりと、綾乃の隣にいた女子が話に加わる。小柄な彼女は、上目がちに綾乃に視線を送る。


 穏やかであどけない笑顔、肩に届く長さの手入れをされた艶のある髪、抱きしめたら折れそうな華奢さ、浜谷と同じ女子校の紺色のセーラー服が似合う白い肌。ひざ丈の長さのセーラー服のスカート、丈の長い紺のカーディガン。キャラクターグッズがたくさんついたスクールバック。


 化粧っ毛のない薄い顔立ちのその女の子は、春風に流れる髪を耳にかけながら、微笑みを浮かべて俺に会釈した。


 「え、えっと」


 何が琴線に触れたのかは分からない。絶世の美人という訳でもない、むしろクラスの女子の真ん中くらいの顔立ち、体形、振る舞い。どこにでもいそうな朴訥さ。


 だけど心を鷲掴みにされたのだ。


 ただ、ただただ胸が高鳴り、目が離せなくなった。


 「そう。こいつ、中学生の同級生の航大。なんていうか、いいやつだよ」


 綾乃が俺の肩を叩きながら、気まぐれな春風にあらがうように、長い髪をしきりに耳にかける。


 「それで、この子が唯。私の高校の同級生なんだ」


 浜谷が、友人の女子に視線を移して笑みを浮かべる。


 「はい、綾乃と同じクラスの唯です」


 鈴を転がすような声、という慣用句が頭の中に過る。国語の教科書に載っている小説の主人公の恋人の声が、あまりに可愛くて可憐だからと、そう形容されていた。主人公の気持ちが、今ならテストで百点満点を取れるほど、理解できる。


 紹介された女子が、はにかみながら少しだけ俯いた。顔を上げた彼女はオーバーサイズのカーディガンの長い袖で頬を抑えながら、上目遣いで俺を見つめた。


 繊細であどけなくて、だけど瑞々しく弾ける生花のような笑顔だった。


 「よろしくね。航大くん」


 「は、はい。よろしくお願いします、ゆ、唯ちゃん」


 女の子との出会いは、教室や塾やカフェや空港だけでなく、寂れた駅前の商店街にさえある。


 桜が散り終えた十七歳の春に、それを知った。

美化する対象こそ、割り引いて冷静な判断をしなきゃ。

そんなことはきっと一生、無理だけれど。

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