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第16話 散りゆく桜と女の子

 その日もいつもと同じように、学校帰りに宮瀬と河津桜商店へ向かった。


 一緒に行動する友人は他にもいる。けれど忙しい彼らには、限りある放課後の貴重な時間に、何かしらの用事がある。


 バレー部の野崎と吹奏楽部の翼は、インターハイやコンクールに向けて朝練や夜間までの練習に励んでいる。東京の難関大学を志望している深山は、模試が近いからと毎日塾に通っている。至極まっとうな理由とともに、彼らは放課後の誘いを断った。大した予定の無い俺と、女の子とのデート以外特に興味を示さない宮瀬以外は、みんなみんな忙しい。


 結局、暇を持て余した陸上部の幽霊部員の俺と帰宅部の宮瀬で、名も知らない花の咲く田舎道を並んで歩く。


 俺はカゴにスクールバッグを入れた自転車を押しながら、宮瀬はリュックを背負い片手でスマホを弄りながら。


 「ブラックモンブランは、そろそろ飽きたんだけど」


 不服な顔をする宮瀬を連れて、河津桜商店の煤けた暖簾をくぐる。


 昨日と同じブラックモンブランを、レジに二つ持っていく。テレビの中の大相撲の歓声に気おされながら、おじいさんの前でじゃんけんをした。


 今日は久しぶりに俺が勝った。だから宮瀬の奢り。


 商店の店先でアイスを食べ終え、アイスの袋とハズレの棒を処分してもらいに、店の中へ入る。微笑むおじいさんと他愛ない世間話なんかをして、軒先で腹を見せる猫に手を振って店を出た。


 「こんなに天気いいのに、男とアイスか。なんかもったいないな」


 「自分から誘っといて何言ってるの、航大。その発言はちょっと心外」


 「なんかふと思ったんだよ。ここ最近ほぼ毎日、宮瀬と無意味にだらだらしてる気がするなって」


 「きっとこれが青春だよ」


 「もっと別な形の青春がいいんだけど」


 「贅沢言っちゃダメ」


 これから解散して各々家に帰るか、一昨日と同じカラオケに行くか、それともファミレスとか図書館で勉強でもしてみるか。宮瀬と適当に話しながら、店の前に置いた自転車のカギを解除しているときだった。

ファミレスでだらだらドリンクバーを嗜む時間が、今となってはきらめく思い出。

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