表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/39

第11話 こんにちは、個人商店_3

 十七年の人生で、個人商店なるものに初めて足を踏み入れる。店内は薄暗くて埃臭く、コンビニの方が値段の面でも衛生面でも格段にいい。分かっていたことだけれど、やっぱりほんの少しだけ後悔する。


 ちらりと横目で宮瀬を見やる。彼は何にも気にしていない様子で「このお菓子、小さいころ大好きだったんです」とおじさんに向かって笑いかけていた。


 宮瀬は常々潔癖だと自称しているのに、そんな仕草は欠片も見せない。これも分かっていたことだけれど、なんて社交的で世渡り上手なんだと感心する。


 メインの客層ではないだろう若者の愛想のいい発言に、おじいさんは頭を掻いて嬉しそうに笑う。


 「そうなんだね。それにするかい?」


 「うーん。今日はこっちにします」


 宮瀬はあいまいに笑って、店先に置かれたアイス用の冷凍庫を指さした。


 使い古されてくすんだ色をしている年季の入ったそれは、生き物のように低い駆動音とともに入り口付近に鎮座している。


 「味のある古臭さっていうか、いい意味で時代に取り残されたレトロって、こういうことなんですね」


 頭の中に浮かんだ言葉が、勝手に口から漏れた。知らない人を相手にこんな意味不明なことを言うのは、失礼かもしれないことを吟味せずに口に出すのは、ある程度大人になってからは初めてだった。


 レジに置いた椅子に座り、近くに置いたテレビで大相撲の中継を見始めていたおじいさんが、俺の方に視線を移した。


 「航大、それは褒めてるの?」怪訝そうな顔の宮瀬が俺の肩を抱き、小さな声で耳打ちをした。「多分、失礼な表現だよ。言いたいことは分かるけど」


 「え、本心でいいと思ったのに」


 「素直な性格は長所だと思うけど、ストレートな表現はダメだよ。もっと小奇麗な表現に言い換えないと」


 「例えば?」


 「それは、ぱっと思い浮かばないけど」


 焦りながらこそこそと、謝罪の必要性や挽回の方法を小声で模索していた俺たちに、おじいさんの朗らかな笑い声が届いた。


 「そう。この店はレトロなんだよ」


 おじいさんは灰色のベストを正しながら、穏やかな笑顔で何度も頷いた。

ぴんちはちゃんす。

ちゃんすもぴんち。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ