第28話「君の手は雨より冷たい」
「今度は俺が助ける番だ!」
「すいません…………」
急いで俺は119番通報をする。
「絶対に到着を待ってくださi……」
そこで電話を切る。
その後スマホを薄い上着の中にしまい、砂浜に投げ捨て、海にあらがっていく。
スマホをしまった時に硬いものに当たったが気のせいか?
泳げないやつが荒れた海に行くなんて普通なら自殺行為でも……
「泳げないなんて関係ない俺は…行かなきゃいけない理由があるんだ!」
フォームなんてなっていない泳ぎ方だろう…だが、俺のその思いだけで着実に愛芽に近づいていた。
「零!戻って…このままじゃ2人とも」
っと弱々しい声が聞こえてくる、
「俺は死なない!お前と約束しただろ?」
俺はあの時のことを思い出す。
「もう死にそうになんてならないで...これは文化祭の勝負の時の願いよ!これは絶対に守ってね!」
「ああ...」
ーーーーーー叫びながら泳ぎ続け愛芽の手を掴む。
運がよく何とか陸に戻ってくる……
パラソルを開こうと思ったがこの風と雨じゃ意味をなさないため急いで近くの屋根のある場所に避難する。
愛芽の意識はギリギリだがあるようだった。
「バカ……無茶して……」
そこで俺は海から出て初めて気づく……
「さっきの……もう一つ……やり残したことは...君に隠し...事を……していたこと...かな...」
「私は……軽い水アレルギー…………なの。」
その言葉に俺はもう一つあることに気づく
最初から雨は避けていた、
初めて一緒に帰った日……
そのほかにも、
折り畳み傘をいつも持っていたこと……
プールの時に見学していたこと……
プールの日の事件のあとしばらく休んだこと…
全てがつながり...涙が出てくる。
「軽いと言ってもこんなに濡れちゃもう助からない...塗り薬があれば良かったけど……夜中に抜け出してきたこともあって…………何も持ってない……」
「もう……助からない!」
「バカそんなこと言うな!さっき救急車を呼んだから大丈夫だ!」
俺はその事実を否定してしまう。
「ああ...やっぱり好きだなぁ……君のそういう...ところ……」
「あなたも……気づいているでしょ?零の手って...こんなに暖かいのね……」
涙が出ている愛芽が言いながら意識を失いかけているのが分かる。
(愛芽の手が俺の手より冷たい?)
このことを海から上がった時からずっと否定したかったのかもしれない……
「どうしてだろうな?愛芽……”君の手は雨より冷たい”」
その時の俺の声と手は震えていた。そして涙が止まらず出てくる
そう……愛芽の手が冷たいんだ……。
俺の手よりも...雨よりも……...……
(何とか助ける方法はないのか……何か..
塗り薬...それさえあれば助けられるのか?)
「……どうする...気?」
愛芽に聞かれ...
「ホテルにある塗り薬を走って取りに行く!」
「無謀よ!零も……安静に...してなきゃ...それに、もう……私は永くない...」
(くそ...!確かに今から走るなら救急車を待った方が早い、でもそれじゃダメなんだ...)
(でもやらなきゃ!)
そう決心した俺は駆け出す!
だが、何かに足を取られ...転ぶ。
これは...
薄い上着だ...このポケットの中にはスマホと……
(!?)
塗り薬が入っていた。
「これか!?これなのか?愛芽!」
愛芽はもう気を失っている...
愛芽が日焼け止めと言っていたものだが...今はこれが薬だと祈るしかない...
(でも、なんで俺の上着に?)
そこで俺はこの上着が愛芽のものだということに気づく!
そんなことより……
(頼む!!!)
雨と風がやんできた……
一か八か塗り薬を塗り始めていた俺は...
「好きなんだ……愛芽のことが...」
その瞬間雨と風の音は俺と愛芽に取って無の存在となる。そんな気がするように俺の言葉は雨と風に負けないぐらいに響いていた。
愛芽は気を失っている。
「夏祭りの時、事情があって断ったけど、自分の気持ちに嘘はつけない!最初はからかわれてばかりで本当にそんな気持ちは微塵もなかった...けど...今は愛芽!千堂愛芽、君のことが好きなんだ!」
これは、愛芽の父親との約束も破ったことになる。愛芽は気を失っている..全く聞こえてないかもしれない……でも不思議と後悔は……...ない!
塗り薬を塗って薄い上着を愛芽にかける!
「上着、返すな……」
(頼む生きてくれ!)
その後...
すぐに救急車がやって来て中から何人か人が出てくる。
「大丈夫ですか?意識がない!担架をもってこい!!」
「はい!」
そんなやり取りを救急車から出てきた人の1人に毛布を肩にかけられながら聞いていると……
「心臓は?弱ってきている!」
っという言葉が聞こえてきた。
俺の体はもう疲れきっていてさっきまであまり動かなかったはずだが...謎の力が俺の背中を押し...愛芽の所に駆け寄る。
「動いちゃダメです!君もあの海に入ったとなると危険な状態だ!」
そんな声が聞こえるが今はもう何も考えない。
「愛芽は!愛芽は助かるんですか!?」
そこまで言い切って俺は急に限界が来て膝を砂浜につける。
「急ぐので下がってください!」
「あなたも病院に来て見てもらいます。担架で救急車に運んだ後救急車に乗ってください。」
さっきの人にそう言われた俺はフォローされながらも、何とか救急車に乗る。
(愛芽...!)
俺の手は震えていた。毛布をかけてもらってもう寒くはない。なのにずっと震えている。
「手を握ってあげてください。」
救急隊員にそう言われた俺は……
「……」
動かなかった。
(愛芽の手がさっきの時より……俺の手より冷たいかもしれない……)
そんな思いが俺の手を鉛のように重くしたのだろう。
(愛芽が危険な状態であることを再認識したくなかった...
今はただ……...
怖い...)
「零……...」
微かにそう聞こえた...
(今の声は間違いなく愛芽!)
「愛芽!意識が戻ったのか?」
「な...に?その……か...お……は」
「もう無理して喋るな」
そう言ったが...愛芽はまた口をわずかに開く
「もし...かして……怖い...の?わ...たしが...しぬ.....の…….....が...」
いつも俺をからかう時の表情をしている愛芽に対して俺の顔は……
「さ……っき……の……...こ……...と……………………」
そこで愛芽の声が聞こえなくなると同時に
ピーーーーーーーー!!
(!!?)
「下がってください!心肺停止状態!これから心肺蘇生法を始めます!いち!にっ!さん!……」
呆然とする俺を後ろに追いやり心肺蘇生法を始める。
他の救急隊員は
「病院まで残り3分です!」
「すでに病院側の手術の準備整いました!」
っと慌ただしくなっている。
(手術?心肺停止?冗談だろ?.....また俺をからかってるだけなんだろ?)
俺の前には涙しか見えなかった。
今回で様々な伏線が回収されたと思います。
読者の皆さんには面白いまたは感動したと思って貰えているととても嬉しいです。




