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第三十七話 黒豹
『いつも傷ついてるのはそっちの方じゃん!何がそんなに怖いの?』
先程のワトソンの言葉を反芻する。
違う。俺は。傷ついているわけでも何かを恐れているわけでもない。ただ…
第三十七話 黒豹
『こんなとこ、早く出てこう。僕たちが大人になったらこんな社会、変えてやるんだ』
『もう誰にも同じ思いをさせない』
かつて、国家保安隊員訓練所という名の地獄の底で雪豹と雲豹とそう誓い合った。でも、訓練所を出てもその約束は果たせなかった。それどころか、自分たちが多くの人間を傷つけ自分たちと同じ境遇に堕ちる人間を生み出しさえした。だから、一度死んだのちにもう一度生きるチャンスが幸か不幸か与えられた時、かつて自分が救いたくても救えなかった存在を護って生きようと決めた。そして、今度こそ兄弟との約束を守ろうと決めた。自分の目の前ではもう誰も傷つかせないことに決めた。そのためだったらいくら自分が傷ついても構わない。そして、今、この約束をした兄弟のうちの一人は色んな意味でもういない。その分まで俺が…。




