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Cicatrix  作者: 深海輝蕾
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第三十二話 命

 『あなたのことは愛してる。でも愛せば愛すほど、憎くもなるの。だから死んでもらう、悪いとは思わない…』

 女の言葉が脳裏に甦り、黒豹は自分の左胸の傷痕に触れた。

「『霧』はおまえか…?」


第三十二話 命

「ただいま」

「おかえり!今日は法外なお代は求められなかった⁉体とか命で払ってないよね⁉」

 ワトソンが心配そうに迎える。

「今日は煙管を思い切り吸って吐け、で終わった」

「え、それだけ⁉絶対なんかあるよ、それ。騙されてない⁉大丈夫⁉」

「さァ。魔術の材料にするとか何とか、って」

「あのさぁ、なんでそんなに無関心なの⁉自分のことだよね⁉ヘタしたら死んじゃうかもしれないんだよ⁉吸って吐け、なんてよっぽど強い魔術だよ⁉なにせ黒豹の体に一回入れたあと作る魔術なんだから、黒豹に激烈に効く魔術だよ⁉」

「フゥン、そうなのか」

 黒豹は心配してあれこれ金切り声でまくし立てるワトソンとはうって変わって静かである。

「ねぇ、さっきも言ったけど、死んじゃうかもしれないんだよ⁉」

「それの何がいけないんだ」

「ハァ⁉」

 座って紅茶を飲み始めた黒豹をワトソンは信じられない、と言うように見る。

「人はいずれ死ぬ。それが遅いか早いかの話だ。それに今更、惜しむような命じゃない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ」

 ワトソンはそれを聞いて内心ため息をつく。

 この人はいつもそうだ。こうして黒豹を大切に思う人間の前で自分のことを卑下してみせる。他人の命に対してはとやかくうるさいくせに自分の命は粗末にする。自分を勘定に入れない分、他人に限りなく与える。僕だってその一人だ。黒豹が僕に居場所をくれた。しかしそんな黒豹がいつか、取り返しのつかないものを失ってしまうのではないかと心配になる。いや、もう失ってしまったのかもしれない。

『生きるって辛い。自分が自分の命よりも大事だと思ってるモノに限って失くしていくし、信じてた人間が自分から離れていくこともある。努力が報われないこともある。死にたくても人って案外死ねないモンなんだよ』

『…死んだら死んだで楽になることもあるかもしれない』

 そう考えると、あの時の黒豹の言葉は紛れもなく黒豹の心の言葉なのだろう。もう失うものがないからいつも潔く立ち向かえるのかもしれない。それは強さのように見えるが、実はそれが弱さなのかもしれない。だからこそ、もう何も失って欲しくない、と僕は思う。

 ここでワトソンは蜂蜜を加えたウイスキーを紅茶で割って飲み始めた黒豹の左胸の傷痕を見る。

 この傷痕は六年前、黒豹と出会った時にはもうそこにあった。一目見たその時から能力傷だと分かるほどそこから呪いの香りがぷんぷんしていた。黒豹は僕にその傷については語らないし、僕もその傷について尋ねることはしなかった。しかし、解術師の僕には分かってしまう。その傷の名は愛と憎しみだ。それも常軌を逸するほどの愛と憎しみ。その傷がついた時の場面もうっすら見える。黒豹のあの傷は女に刺されてできたものだ。女は黒豹を殺そうとしたし、黒豹もなぜかそれを望んでいた。しかし、黒豹は死ななかった。死にきれなかった。そこまで感情が残る傷を見たのは初めてだった。そこまでの呪いがかかっていたら息をするのさえ苦しいはずだ。当然解術師である僕はその傷の呪いを解いて黒豹を解放することもできる。しかし、僕はこの六年間、そうしようとはしてこなかった。その傷は黒豹を苦しめながらも護っているように見えるからだ。「憎しみ」は黒豹を苦しめ、殺そうとする。しかし「愛」は黒豹を護る。「愛」と「憎しみ」が微妙な均衡を保って黒豹を生かす命となっているように見えるからだ。これは自分の憶測に過ぎないが、黒豹はその傷がなければここまで生き残っていなかったのではないかと思う。ここまで感情の残る能力傷あるいは呪いを見たのは初めてだが、こんなに繊細な能力傷あるいは呪いを見たのも初めてだ。相手が彼にそんな呪いをかけるに至った経緯や、その相手がどんな人だったのか、それに対する黒豹の考えも気になる。しかし、それを僕は尋ねることもしない。なぜなら…

「なんだよ、ワトソン。そんな熱心に傷なんて見て」

「いやぁ、そんな傷どうやってできたのかな、って」

「知りたいか?教えてやらないがな」

 なぜなら黒豹はこういう人だからだ。


深海輝蕾の部屋

第二回目のゲストはワトソン氏。


深海輝蕾:今日のゲストは本作屈指のツッコミ役兼イジられキャラのワトソンさんです!


ワトソン:どうもー、ツッコミ兼イジられキャラのワトソンでーす。あの、ひとつ言いたいことがあるんですけど。


深海輝蕾:はい、どうぞ?


ワトソン:作者さんのワトソンいじりエグくない⁉絶対楽しんでるでしょ。


深海輝蕾:はい。バレてました?私、貴方をイジるの好きなんです。


ワトソン:うわあああ、言ったよこの人。絶対サディストでしょ。


深海輝蕾:そうでもないですよ。時にサディスト、時にマゾヒストです(笑)。ワトソンさんと一緒にいれば全力でサディストやりますけど、黒豹といれば全力でマゾです。私、黒豹に苛め抜かれたいですね…なので、作中でのワトソンさんのイジられ方は私が黒豹にされたいイジられ方ですね。さて、ワトソンさん。今日貴方をお呼びしたのはですね…ワトソンさんしか知らない黒豹について教えて欲しいからです!


ワトソン:作者さんはホントに黒豹が好きだね。何がそんなにいいのか僕にはちょっと分からないな。


深海輝蕾:解術師のワトソンさんから見て、黒豹の能力ってどんな感じなんですか?


ワトソン:うーん、そうだね…あれはマジで強い。cicatrixの能力の強さってその傷にどれだけ強い感情がかかってるかに比例するんだけど、黒豹のはかかってる感情がクソデカ&激重だから、それに能力も比例してすごい強い。近くでその能力使われるとホントに息苦しいって言うのかな、すごい圧を感じる。黒豹と出会って最初の頃はいきなり黒豹が能力使うと僕が意識飛ばしちゃったりするくらい。こうね…すごい振動が自分の周りで起こってそれが振動数増しながら自分の身体の芯にどんどん迫ってくる感じって言えばいいのかな。あれはマジでポルターガイストって感じ。


深海輝蕾:でもワトソンさんも一級解術師になるくらいなんだから強いはずですよね?ぶっちゃけ、黒豹とワトソンさんが戦ったらどちらが強いんですか?


ワトソン:うーん…難しい質問だね。僕ももちろん強いかもしれないけど黒豹と僕の力ってなんか種類が違うんだよね。僕はフクザツに絡んだ魔術を解けるくらい細かく魔術を使うことができるし、出力量もほぼ無限なんだけど、解く専門だから黒豹みたいにいろんなことはできない。だから黒豹が出してくる能力による技を無効化するしか僕には対抗手段がないから、黒豹の方が強いかな。じゃあ、黒豹が技出して来る前に黒豹の呪いを解いて能力をなくしちゃえばいいよね、って話でもなくて。能力がなければ黒豹はマジで近接戦に持ち込んでくるよね。そしたら僕はそれに対して魔術で対処することはできないし、運動神経もないので負けます(笑)。よってどっちにしろ、黒豹が強い、以上!だからさぁ、マジで黒豹とまともに戦おうとする奴の気が知れないよね(笑)。


深海輝蕾:黒豹って基本何でもできるイメージなのですが、黒豹ができないことってなんかありますかね。


ワトソン:あー、あの人、虫ダメだよ。まぁ僕もだけど。基本怖いものなし、みたいな黒豹が唯一怖がるのは虫。あと、超音痴(笑)。


深海輝蕾:えー聞いてみたいな、黒豹の歌。


ワトソン:マジで下手くそだから。元の曲が一体何なのか分からないくらい。あと、黒豹のその曲聞いた後に同じ歌うたおうとしてもこっちまでなんか正しく歌えなくなるくらい。


深海輝蕾:それはよっぽどですね…。黒豹の知らない一面も見えたところで今回はおしまい。ワトソンさん、ありがとうございました。








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