第二十九話 班分け
修学旅行の班分けってわくわくするよね―。
第二十九話 班分け
「おい、黒豹。いま何て言った、もう一回言ってみろ」
「だから、そう何度も言わせるなよ。翠玉が百顔姫なんだよ」
椅子からガタンと立ち上がったシュリはテーブル越しに黒豹に掴みかかる。黒豹が雪豹の件と翠玉の件を並行して解決するために役割分担をしようと、シュリにこの死体事件には雪豹が関わっている可能性が高く一刻を争うこと、翠玉は翠玉で百顔姫であるため早急に助ける方法を捜さねばならぬことを報告した結果、冒頭に至る。
「い、嫌だ!オレはそんなの信じない…!黒豹、オレをからかおうったって無駄だからな!!」
「シュリ、言わずにいたことは謝る。だが、それが事実だ。翠玉は百顔姫で今はその面がないとあまり喋れないし、もうそれほど長くはないかもしれない」
黒豹のその言葉に嗚咽するシュリとその様子を冷静に見ている黒豹を見て、ワトソン、ニコライ、雲豹は困ったように顔を見合わせる。翠玉はといえば面をつけて黙って座っている。
シュリはなおも泣いている。テーブルに突っ伏し、嗚咽しながら悔しさ、悲しさに任せて拳をぶつけている。黒豹はなおもそれを黙って見ている。しかし、黒豹がついに口を開く。
「…めそめそするな。何が悲しい。まだ打てる手はあんだろ。翠玉が百顔姫であることがそんなに悲しいか。百顔姫の何がそんなにいけないんだ」
「オ、オレは平民で、翠玉さんは百顔姫。そ、そんなのオレには翠玉さんと話す権利すらないように聞こえるじゃん…オレにはそもそもチャンスがないみたいでムカつくじゃんよォ…」
「ハハッ、あいつに馬乗りになられておいて、なに言ってんだ。百顔姫と言われようが、人間と変わりない。お前の手で百顔姫から人間に変えてやればいい。そのために協力して欲しい」
シュリはテーブルに突っ伏したまま、頷く。
「じゃあ、班分けするか。翠玉班と雪豹班に分ける。俺とワトソン、ニコライは翠玉班。雲豹とシュリは雪豹班」
「待て」
そう言って手を挙げたのはシュリだった。
ワトソン、ニコライ、雲豹はぎょっとしてそちらを見る。翠玉と言えば無関心に黙って座っている。
「オレも翠玉班がいい」
「あぁ…シュリ、雪豹班はお前にしか任せられないと思ってるんだが。お前は一度奴らとやりあってんだろ」
「うん…?雪豹班の目的って雪豹側の能力が発動しないようにすることだよね?じゃあ僕でもいいんじゃない?僕だったら斬られてもその場で解術できるよ?」
「ダメだ、ワトソン。お前の存在はできるだけ伏せたい。向こうにとってはお前は作戦を台無しにする邪魔者。そうなれば向こうは全力でお前を消しに来る。そして俺やシュリだって奴らとやりあうのに危なかった。お前、自分の鈍くささをナメるなよ?お前じゃ秒で消される。そうなれば俺たちの勝ち目はなくなる」
「あーッ…降参っス、黒豹センパイ」
シュリが両手を挙げる。
「雲豹はシュリと組んで奴らの邪魔をしてくれ。タイホしちゃってもいい。シュリも賞金首がいたらそのまま狩ってくれても構わない」
「おいおい、すげぇオーダーだな。俺はそんなにヒマじゃないって。それに俺は黒豹専門なんだよ、黒豹以外を検挙してたら怪しい」
「じゃあこういうことにしたらどうだ?夜な夜な通り魔に興じる奴らがいる。黒豹はそれを狩りにくるはずだ、でどうだ。俺はこの間、泥棒稼業をやめてやる」
「ハハッ、さすがだな。俺からもお願いしたいね、この間は街中でばったり俺に遭遇しないでくれ。でないと、俺はお前を捕まえるフリしなきゃいけなくなる。そんなことで時間を無駄にしたくない」
「おいおい、お役人がこんな窃盗犯と手ェ組んでいいのかよ」
シュリがやれやれと首を横に振る。
「雪豹となれば話は別さ。一応俺も、国民の安全を担うお役人なのでね」
「アンタがいいならいいけど」
「じゃあ、他に何か言いたい人は?…いなさそうだな。じゃあ、頼む。くれぐれも死ぬなよ」




