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Cicatrix  作者: 深海輝蕾
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第二十二話 非常事態

「ワトソン、お前が家に帰ってフォーク野郎を解術しろ」

 電話口を塞ぎながら側にいるワトソンに指示する。

「ニコライ!今からワトソンがそっちに帰る!それまでなんとか凌げ!フォーク野郎をうちから出すな!」

 再び黒豹は電話口に向かって話すと電話を切る。

「行け、ワトソン!こっちは俺がなんとかする!」

 ワトソンは頷くと、武運を、と呟いて夜に駆けて行った。

「さーて、俺もお仕事頑張りますか」


第二十二話 非常事態

 黒豹は出ていく死体の後をそろりそろりとついていった。その死体は気味の悪いことに生きている人間のように確かな足取りで歩いて行く。ここまで暗ければ本当に生きた人間と見紛うほどだろう。三叉路も大きな通りの交差点も迷うことなく歩いて行く。黒豹は診療所を出た時と一定の距離を保ちながら他の追っ手がいないか注意して後をついていった。元国家保安隊員、さらにはそのエリートであった黒豹の追跡に気づく者も、そしてそれを撒ける者もほとんどないはずだった。しかし、診療所を出て五分でそれは起こった。死体が振り向いたのである。黒豹はごくりと唾を飲み込む。

 自分の尾行にはなんの落ち度もなかったはずだ。普通の人間であればまず気づくはずのない尾行をこうも易々と見破ったのは何故だ?…もしかして裏で糸を引く人間は死体と感覚を共有できるのか?そうだとしたら裏で糸を引く人間は一般人ではない。国家保安隊員かそれと同等の力を持つ人間ということだ。蛇の道は蛇。こっちの手札は相手にも丸見えの可能性がある。

「面白くなってきたじゃねェか…」

 黒豹は懐に手をやると武器を握った。物干し竿ほどの太さの伸縮式の金属製のつっかえ棒である。かの有名なワイルド・ワイルド社製品である。ワイルド・ワイルド社についてはまた後ほど。これなら相手とある程度の距離を置きながら戦うことができる。斬られただけのシュリまでがふらふらとどこかに行こうとしたということは、この死体に斬られただけでも相手の術中に落ちる危険性がある。

 大通りを歩いていた死体は今度は細い路地に入って行く。操られていて、この地元の人間しか知らないような道を歩くということは裏で糸引く人間はかなり土地勘のある者かもしれない。その場合、診療所周りの土地勘はあまりない黒豹には少し分が悪い。

 もしやそれを分かっていてこいつ…。そして俺が長物で武装することを読んだ上の行動か…?このまま狭い路地に誘いこまれるのではなかろうか。

 黒豹はつっかえ棒は諦めてナイフを握った。ナイフを握った瞬間、死体は姿をくらませた。

 クソ…!どこに行きやがった⁉

 いま、黒豹の前には多くの狭い路地が横たわっている。黒豹はすばやく視線を巡らせて尾行対象を捜すが見つからない。こうなったら耳だ。黒豹の耳はどんな異音も逃さない。どんな言葉の裏に隠された心をも正確に聞き分ける。

 …ここだ!黒豹は一番手前の左側の路地に入る。その途端、路地の両脇の低い建物からふたりの人間が飛び降りて来る。黒豹は前と後ろを完全に挟まれた。


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