第二話 消える死体
平凡な日常の隣で怪奇、起こる―。
第二話 消える死体
「あーあ、これで何人目かな」
一人の瘦せ型で長身の男が頭を抱える。その目元には隈が目立ち、死人のようである。しかし、歳の頃は三十代半ばと言っても千五百歳を超えていると言っても通りそうである。そして、やる気のなさが溢れるその目にはある種の狂気がちらちらと顔を出す。もはや見た目は凶悪犯そのものである彼の正体は元医者、その名もDr.ラヴである。ワケあって医師免許を失い今では闇医者をやっている。そんな彼は夜な夜なスラム街に通っては無償で医療行為を施したり、瀕死の賭け闘士を拾ってきては見事に生き返らせたりしている。闇医者であるが、腕は確かなのである。彼にとってこれは人助けでもなんでもなく、自分の研究であり趣味なのである。しかも、死人さえもが彼の実験台となる。
しかし、そんな彼でも解せない怪奇が今、起きている。闇医者の前には空になった死体袋があるだけだった…。これが一回目ではない。ここのところ、同じようなことが何回も起きている。闇医者が街中で死体を拾い、自分の診療所に帰って来る。すると翌朝、その死体が消えているのだ。物騒な世の中だ。毎日しっかりと施錠を行う。だから外から何者かが入って死体を盗んで行くことはないはずなのだ。
「まァ…生き返って出ていったんならいいんだけどな…ってそんなしょっちゅうはありえないか。こういうのは蛇の道は蛇って言うんかね」
そう言って闇医者はとある人物に電話を掛ける。その電話の近くの壁には『何でも屋 とりあえず何でもやります。ご用命はこちらに… 054‐○○○‐××××』と書かれたチラシがメスで固定されている。