第十六話 百顔姫救命委員会、発足す
「でも判っておろう、私はもうすぐ死ぬ」
「…そうとも限らない」
黒豹の言葉にニコライとワトソンは驚きと期待に目を見開く。
「く、黒豹…ホントに信じていいの…?」
「まァ…まだ憶測の域は出ないが」
「全部説明してよ」
第十六話 百顔姫救命委員会、発足す
「まずさ、仮面をつけたとき翠玉さんは喋ったよね、それってなんで?普通、百顔姫って喋らないでしょ」
「たぶん、百顔姫って喋る必要がないから喋らないだけで、生理的に喋れないわけではないんだと思う。こいつの場合、恐らく雲豹が毎日のように隠れて話しかけに行ってたからそれでなんとなく喋るようになったんだろ、違うか?翠玉」
「その通りだ。毎日雲豹が私のところに来ていた。だいたい兄弟の話をしていった。お酒も頂いた」
仮面をつけたまま、翠玉は淡々と話す。
「は?酒まで飲んでたのか。あいつのペースに合わせて飲んだら吞兵衛になっちまうよ」
「そんなに飲んでいない。嗜む程度だ」
翠玉が面をした顔を少しばつが悪そうに逸らしたように黒豹には見えた。感情のない翠玉がそんなことするわけないのに。俺は馬鹿になったかな、と黒豹は内心苦笑した。
「はぁ…嗜む、ねェ。あいつの嗜むっていうのでもだいぶの酒量だ。ったく、何してくれてんだ、あいつは。まァそれは置いておくとしてもだ、仮面があればちょっとは喋りやすくなるんじゃないか、とは思ったがどうやら予想以上だったみたいだ」
黒豹さん、とニコライが手を挙げる。
「そう思った根拠は何ですか?」
「百顔姫は自分のつけた面を踊りで表現する。もしも、面が怒り狂った女の面だったとしても、百顔姫はそれをうまく表現してみせる。見る側だってそれが怒り狂った女の舞だと理解する。だとしたら…百顔姫も俺たちと同じように怒りを理解している…つまり感情があることにならないか?面があればそれが出やすくなる。言葉も出やすくなるんじゃないか、って思った。人間と呼ばれる存在と百顔姫と呼ばれる存在は基本的に体の機能も認知機能も変わらない。違うのは感情の部分だけだ。そう考えると百顔姫の、人間に比べて異常に短い寿命の要因が見えてこないか?感情さえクリアできれば死からは逃れられる。まだ確定ってわけじゃないが」
「じゃあ、その感情をクリアするためにはどうするの?」
「とにかく、仮面は付けたままでこっちから話しかけて感情の根っこみたいなものを刺激し続ける。とりあえず明日医者に診せて体に異常がないか調べる」




