第十五話 話
「待て。話がある」
そう言って翠玉の細い腕を掴んだ黒豹の目と翠玉の目が合った。
状況を察して、ニコライは放心して固まってしまったワトソンの腕を引いて部屋から出た。
「翠玉、お前は生きたいか…?」
第十五話 話
部屋から出たふたりだが、そのまま自室に戻るはずなどなかった。ドアに耳をつけて盗み聞きしていた。
「翠玉、お前は生きたいか…?」
聞こえてきた会話にふたりは「ん?」と顔を見合わせた。
※副音声でお楽しみください
ニコライ:え?え?思ってたのと違いません?なんか重くありません?
ワトソン:(首を振る)分かんないじゃん、これがまだ導入の部分かもしれないじゃん
ニコライ:(首を傾げる)そんなことあります…?
ワトソン:…分かんない。
「依頼人はお前に生きていて欲しい、と思ってる。でも、お前の命はお前のものだ。だからいくら依頼があっても、最後はお前の意志を尊重したい」
相手は当然黙っている。
「そうだよな。俺、どうしたらお前が喋れるか考えたんだよ」
ニコライ、ワトソン:ええええええええッ!?もしかして黒豹が考え込んでたのってコレだったの!?
黒豹は立ち上がって翠玉の顔に自分がいつも盗みの際に使っているクロヒョウをかたどった面を被せる。
「これでどうだ?もう一度聞く。お前は生きたいか?」
「…」
「生きるって辛い。自分が自分の命よりも大事だと思ってるモノに限って失くしていくし、信じてた人間が自分から離れていくこともある。努力が報われないこともある。死にたくても人って案外死ねないモンなんだよ。だからよく考えてほしい」
「分からない。私には感情がない。だから生きたいのかどうかは分からない」
「…死んだら死んだで楽になることもあるかもしれない。だから、きっとどっちを選んでも不正解ではない」
そう言って黒豹は立ち上がると部屋から出ようとして、盗み聞きをしていたワトソンとニコライを見つける。
「何してんだ。別に盗み聞きなんてしなくても、堂々と部屋の中に入って来れば良かったのに」
「いやだってさぁ…もっと違う話だと思ってたし…」
ワトソンがごにょごにょ言う。
「翠玉、ここからは俺の勝手な意見だ。俺は、お前に生きていて欲しい。国に散々利用されて何もできないまま死んで欲しくない。自分の人生を生きて欲しい」
「でも判っておろう、私はもうすぐ死ぬ」
「…そうとも限らない」
一縷の希望―!




