第十二話 女の話
獲物と狩人は何を語る―。
第十二話 女の話
職員用宿舎第七棟、三階の一室。大きな満月が部屋を照らす。ふたりの男は向き合っていた。ひとりは両手を上げ、降参のポーズをもうひとりは銃を構えている。しかし、ふたりはどこか楽しんでいるようでもある。
「何だ、1457。俺に殺されに来たか?」
「ククッ、できもしねェのによくそんなに威張れるな、1459」
「俺に撃てねェって判ってここまで来るたァ、お前も相当に暇なんだな。女道楽はやめたのか?」
「ああ。ある女が忘れられなくてね」
黒豹はそう言って服を引っ張ると左胸の傷を見せた。
「そいつ、俺を刺して殺しやがった」
「ハハッ、イイ女に違ェねェ。どうりで忘れられねェワケだ」
「俺の女の話はどうだっていいんだよ、お前が置いてった女の話だ」
「ああ。そのこと」
***
職員用宿舎第七棟、三階の一室。月の明かりだけを頼りにふたりの男は向かい合って座っていた。
「あいつが何なのか、俺はもちろん、解る。でもお前の依頼の内容については測りかねている。どっちがお望みだ?あいつが幸せに死ねるようにしてくれ、なのか、あいつを死から救ってくれ、なのか」
「さすがだな、そこまで見抜いたか、黒豹。俺が望むのはできれば後者だな」
「だよな。その代わり、頂くモンはきっちり頂くからな」
「ハハッ、手厳しいこって」
「じゃあな、聞きたいことが聞けたし、もう用は済んだ」
そう言って黒豹は立ち上がる。
「はぁ?ホントにそれだけ聞きに来たのかよ、わざわざこんな危険冒して?」
「生憎、俺に男に会いに行くような趣味はない。翠玉がいなくなって寂しいだろうとか、今日が雪豹の七回忌だからとかそういうのじゃない。ただ依頼の内容の確認に来た、ただそれだけだ」
そう言い残すと黒豹は来た時と同様に唐突に去った。




