第十話 禁忌?そんなの関係ねェよ
何でも屋、史上最大の危機―!?
第十話 禁忌?そんなの関係ねェよ
「く、黒豹さん、流石に百顔姫はマズいですって」
「そうだよ、黒豹、今からでもこーっそり返しに行こうよ、黒豹ならできるでしょ」
ワトソンとニコライが両側から黒豹の腕に涙目で縋り付く。
「ねぇ、黒豹、お願いだよ」
「ハァー…」
黒豹がやれやれ呆れたとでも言うように溜息をついた。
「なんだ、お前ら、なっさけのない…」
こいつは、と黒豹が椅子に座った百顔姫の長い黒髪をひと掬いする。
「俺たちと同じ人間だろうが。禁忌も何も、関係ねェよ」
ワトソンとニコライは、口をあんぐり開けたまま、黒豹を見た。
「なんか、困ってんだから何でも屋に来たんだろうよ。どこの誰であれ、困ってるやつはうちの大事な客だろ、忘れたのか」
その琥珀色の瞳は、窃盗犯とは思えないほど真っ直ぐだった。
「異議のあるやつは?」
その言葉に異議を唱える者は誰もいなかった。
黒豹。窃盗犯にして、何でも屋店主。ウェーブがかった黒髪に琥珀色のミステリアスな瞳が人の心を捕らえて離さない。故に、男女関係なく懸想されることが多い。ポルターガイストなる能力を持つ。
「お嬢さん、騒がしくて悪かったな、俺は黒豹だ」
黒豹はそう言って百顔姫に手を差し出す。すると、誰もが予想だにしなかった出来事が起きた。
「…スイギョク」
百顔姫はそう言って黒豹の差し出された手を握った。
「お前の名前か」
黒豹は淡々と言う。
「え、ちょ待ッ、いま喋ったよね!?百顔姫が!?」
「え、そんなことってあります…?」
「まァ…そういうこともあるんだろうな、たぶん…?」
翠玉という名の百顔姫を前に三人は顔を見合わせて困惑する。
「とにかくすげぇ込み入ってる、っていうのは分かった。そんで雲豹は察してくれと言ったが一度きちんと説明してもらう必要がある。以上」
「でもさ…翠玉さん…だっけ?彼女を捜してお役人が来るのは時間の問題じゃない…?」
「なァに言ってんだ、ワトソン。こちとら逃げるのは得意中の得意だろ。なんせ窃盗犯だし」
「ハハッ。窃盗犯黒豹には余計なお世話だったね」
「そういうこと」




