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魔法使いの家事手伝い  作者: トド
第一章 『私のアゼル』
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③ 『情けない人?』

 学校が終わり、家に帰る。もちろん、帰りもネイとリリーナといっしょだ。

 私達の家はご近所さんなのである。



「だーかーらー! 何度も言っているでしょうが! 商品の並べる順番はそうじゃあないって! 一体いつになったら覚えるの!」


 私達はお話をしながら楽しく歩いていたのだが、不意に、雑貨屋さん――<銀色のクチバシ>から大きな声が聞こえてきた。


「ははっ。今日も元気だね、ラリアさん……」

 リリーナが引きつった笑みを()かべている。それは、ネイも同じだ。


 ラリアさんは、この村に二店しかない雑貨店の一つを営んでいる、お(ばあ)ちゃんだ。

 もう(こし)が曲がってきているのに、声の大きさはこの村で一番だとみんなに言われている。


 私達はこっそり店に近づいて中を(のぞ)くと、顔を真っ赤にしたラリアさんに、私のよく知る赤い(かみ)でほっそりとした男の人が(しか)られている。考えるまでもなくアゼルだ。


「すみません、すみません」

「謝っている(ひま)があるのなら、早く商品を並びかえなさい! このノロマ!」

「はっ、はい~!」

 アゼルは大あわてで商品を並びかえていくが、私から見てもものすごく手際が悪い。

 本人は大真面目で全力でやっているのだが、絶望的に不器用なのだ。


「ああっ、もう! モタモタモタモタしているんじゃあない! もう! こっちは私がやっておくから、そこの木箱を裏に運んでおきな!」

 ラリアさんはついに我慢(がまん)できなくなったようで、アゼルに別の指示を出して、自分で商品の並びかえを手早く行っていく。

 そして、そんなラリアさんを横目で見ながら、アゼルは言われたとおり、木箱を持ち上げて運ぼうとする。


「あっ!」

 私は思わず声を上げてしまった。


 なんとか木箱を持ち上げたアゼルだったが、木箱が重かったのか、ふらふらと頼りない足取りで歩いたかと思うと、すぐにたおれて木箱の中身を(ゆか)にぶちまけてしまう。


「ああっ! 何やっているのよ、この役立たず!」

「すみません、すみません」

 アゼルはひたすら謝り、散らばってしまった中身を集めるが、やっぱりその手際も悪い。


 その姿を見て、私のとなりにいるネイがあきれた様にため息をつき、


「ねぇ、アミィ。今からでも(おそ)くないから、あの人は止めた方がいいんじゃあないの?」

 そんな失礼なことを言う。


「ネイちゃん、それは言い過ぎだよ」

 リリーナはそう言って止めてくれるが、リリーナもアゼルに対して良い感情は持っていないようだった。


「何を言っているのよ、ネイ。私はますます()れ直したもん!」

「えっ? 本気で言っているの?」

「アミィちゃん、本当に?」

 おどろく二人に、私は得意げに笑ってみせる。

 そう、こんなことで()らいでしまう程、私の気持ちは弱くないのだ!


「アゼルはたしかに不器用だけれど、一生懸命(いっしょうけんめい)に努力をしているわ。それは、将来、私と料理店を経営する準備を頑張(がんば)ってくれているという事だもん。だから私は(うれ)しいの。私のために努力をしてくれているんだから!」

 私はそう断言すると、「ほらっ、ここにいたら邪魔(じゃま)になるから、私達は帰りましょう」と言って、二人の手を引っ張って雑貨屋さんに背中を向ける。


「まったくもう。『(こい)盲目(もうもく)』ってやつね」

「もう! 駄目(だめ)だってば、ネイちゃん」

 二人の言葉を聞きながらも、私は笑顔を()かべていた。


 だって、(うれ)しいと思う気持ちは本当だもん!

 ……でも、それは半分だけ。もう半分は別の気持ちだった。


(アゼルったら、まったく……)

 その気持ちは腹立たしさ。


 けれど、アゼルが情けないから私は(おこ)っているわけじゃあない。そんなわけがない!

 だって私は知っている。アゼルがすごい男の人なんだって。


 でも、アゼルはそれを人に見せようとはしないんだもの。それが私には納得がいかない。

 秘密だから……、けっして話さないと約束したから、私はだれにもその事を言えない。それがものすごく悔しいんだ!


 そんな気持ちをおさえて、私は笑顔でリリーナとネイといっしょに家に帰る。

 絶対に後でアゼルにお説教をしようと考えていたのは、もちろん内緒(ないしょ)だった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 一途な愛情、友達を思う忠告、なにこれ?善意しかないですやん! [一言] 昔、読んでいた。『フォーチュンクエスト』思い出しました。ライト《光の》ノベルって感じ◉‿◉
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