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美少女たちの会話。

 翌朝、比呂が女の子を助けた次の日のこと。

 彼の通う高校――四葉学園高校の一クラスでは、ある女子たちが会話で賑わい見せていた。

「ねえ、朔良。まーた告白されたんでしょ? 今度はサッカー部キャプテンから」

「うん。だけど、断った」

「え~、なんでぇ~!?」

「なんていうか、下心がすけすけだったから」

 朔良と呼ばれ、困ったように返答する女子――北村朔良は腰まで伸びた藍色の髪を靡かせながら返答した。

「あぁ~、光と同じ匂いがしたってわけかぁ~。っていうか、朔良も愛桜も彼氏とか作らないの?」

「それが知りたいなら、まず、自分がどうにかしなさいよ」

 ブーブーと垂れて、唇を尖らせるのは、恋バナが大好きな女子高生――水山明日香。ポニーテールをしてる銀髪を揺らしながら、いつもの色恋沙汰を二人に問うてくる。

「う~ん。だって、そう簡単に私好みの男なんて見つからないからいいよ。愛桜はどうなの?」

「…………どうもこうもない。男なんて皆、クズよ」

 明日香に話を振られ、間を置いてから応える彼女――火野愛桜。黒髪に赤メッシュをして素行の悪い女子高生を見せてる。

「その割には、言葉に間があったよ」

「…………」

 朔良のツッコミが的確すぎて、言い返せれない愛桜。

「…………」

 愛桜は目線を明日香と朔良から逸らそうとそっぽを向き始める。本人としては隠してるつもりでも、周りから見れば、わかりやすい反応である。

 人の恋バナに目がない朔良が黙ってるはずもなく――。

「愛桜~。もしかして、気になる男でもいるの~?」

「驚いた……まさか、愛桜が……」

 明日香と朔良。二人とも目を見開いて固まる。

 それだけ驚くべき内容だったのだ。どんな男にも喧嘩腰になる愛桜に気になる男ができたというのが。

「初耳なんだけど……え、いつ!? いつのこと!?」

「落ち着きなさい、朔良。はしゃぎすぎ」

 瞳を輝かせる明日香を、気怠そうに窘める朔良。言外に「落ち着いたタイミングで話しなよ」と愛桜に送る。

「私……何も言ってないけど…………」

 白い頬を赤らめ唸る愛桜だが、先ほどの反応は誰が見てもわかりやすい反応だった。

 たまに見せるポンコツさが伺える愛桜である。

「いや、そっぽ向ける時点でバレてるのと同じ……」

「ホント! 愛桜って、いっつも喧嘩腰だけど、ホントは初心だよね」

 と言いつつも、言外に「そういうところが愛桜の可愛いところなんだけどねぇ~」と付け加えて、明日香は笑う。

 二人に看破されたことで愛桜は逃げ場をなくしてしまったのか。無視を決め込もうとする。逃げ場がないのを自覚しながら、口を割ろうとしない。

「さぁ~、さぁ~、吐いて身のためだよ」

 詰めかける明日香に愛桜は若干、涙目になり、心が折れたのか気恥ずかしそうに口を開く。

「実は、昨日……なんだけど……」

「……すごい直近だ」

「うんうん、それで?」

 空気を読んでるのか、明日香は興奮しながらも控えめな態度で聞きに徹してる。

「服でも買おうかな、ってデパートに行こうとしたら、急に怖い人に声をかけられて……」

「……うわぁ、嫌な奴」

「え、大丈夫だったの!?」

 詳しくは聞かないものの、明日香と朔良、双方は察する。愛桜はナンパされたのだ、と。

 彼女たちもそういった経験があるため、愛桜の気持ちは痛いほどわかる。

「あまりにしつこかったし。小道で人目につかないから助けも呼べないから。つい、喧嘩腰になっちゃって……」

「そういうところが、愛桜の悪い癖だよ」

「でも、悪質だね、そういう野蛮人……恥ずかしくないのかな」

 暗い話で雲行きが怪しくなっていく。話を聞いている明日香と朔良は心配するように愛桜の顔を見つめていた。

「うん、でも……困った矢先に、怖い男をクールな男が撃退してくれた……」

 途端、愛桜は頬を赤らめ、そっぽを向く。思い返すのは言うまでもないが、昨日の出来事だ。

「な、なにそれ……少女漫画みたいな……」

「え~、いいなぁ~」

 一度は女子が夢見ること。それは軽率な男からイケメン男子が守ってくれるというものだ。

 顔を赤く染め上げてる愛桜を見ると、明日香は羨ましそうに声をあげた。

「それに……クールな男が怖い男を見つめたけど、私を守ってくれる、っていう意志を感じた。その後のフォローも優しかったし……かっこよかった」

 饒舌になって、嬉しげに乙女モードになる愛桜。その様子はまさに、恋する乙女そのもの。

 想像以上の話だったために、明日香と朔良はビックリする。

「連絡先とか聞かなかったの!? 助けてくれたのに、クールとか……それって、もう運命の人じゃん」

「明日香……あの時、そこまで頭が回らなかった」

 しょぼんと、肩を落とす愛桜。“なにしてるのよ!?”と顔で訴える明日香だが、すかさず、静かに聞いてた朔良がフォローに回った。

「特徴とかわかる? 覚えてる範囲でいいけど……」

「え、えぇ~ッと……」

 愛桜は覚えてる範囲で薄ら記憶してるクールな男のことを思いだす。

「確か、私を助けたときも「俺はやりたいことをやっただけだ」とか「弱いんだから、群れてた方がいい」とか言ってた」

「うわぁ~、なんか我が強い人だねぇ~」

「他には……」

 明日香は愛桜の話からクールな男への印象が天川光に似た印象を抱き、逆に朔良は「ん?」と、どこかで見たことがある印象を持つ。

「顔は覚えてないけど、黒髪、黒眼……そういえば、休みの日だったのに、うちの()()()()()()!」

「休日なのに、学校にいるとか……どれだけ、学校に居座りたいのよ~」

 明日香は休みの日にも学校とか意識が高すぎる印象を持つも、朔良は“あぁ~、もしや――”という印象を持つ。

「まあ、でも、会えるんじゃない? 運命の人ならね。

 もしかしたら、()()()()()()()()()()

「まあ~、そうだよねぇ~。歳も近そうだったの? 愛桜!」

「……多分、近かった……」

 助けてくれたクールな男の顔を思い浮かべれば、プシュ~ッと頭の上から蒸気が出るほど、顔を真っ赤にさせる愛桜。その姿を認めると、明日香と朔良は直感するのだ。

「愛桜、恋してるねぇ~、これは」

「そうだね。上手くいくこと願ってる」

 愛桜は口に出さないが、態度からもう滲み出ていた。“好き”という感情が――。

「……む~、私、そこまで軽い女じゃない」

「まあまあ、そういうことにしておいてあげるけど……でも、いいなぁ~。私も愛桜みたいな出会いがした~い。恋した~い。ねえ、朔良」

「そうね……身体目当てとか、ロクな男しか出会ってないから、いい男の人がいればいいけど」

 愛桜に当てがわられて、強烈に羨む明日香と多少なりとも羨ましがる朔良。

 こうして、明日香と朔良の二人は“運命の出会い”を羨むのだが、愛桜を助けた男との出会いをきっかけに恋することになるとは思わなかった。


 比呂は知らない間に美少女たちを攻略するきっかけを与えてしまったのだった。

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