〜タイムリープしてでも掴みたい〜
「今日から日本は女性の権利を守るために世界性戦を始めます」
ある日の朝、何気なくつけたテレビに飛び込んできたニュース。きつね色に焼けた食パン。いつも通りのいちごジャム。これらを喉に流し込みながら耳にした衝撃的な宣言。
「過激すぎるだろ…女性は人類の半分だろ。半分のために人類全てを巻き込むのか?馬鹿だろ、俺の母親」
僕は20歳の大学生だ。親が政治家だからといって裕福な暮らしをしている訳ではない。バイトをして生活をしている。
SPに守られるなんてこともない。僕は家族の中ではみ出しものだからだ。
なんなら親とは縁を切りたいとまで思っている。
一言で言うなら、軽蔑していると言っても過言ではない。
行ってきますと言う相手もいない家を出る。昼食を買うためにコンビニに寄る。コンビニに並んだ雑誌が目に入る。
「女性自身」「男性自身」「週刊少年ジャンプ」の隣には、「週刊少女スキップ」。
この世界は男女平等ではなかったのか?
大学に着く。女子達が投げて飛び交う物は、僕が小学生の頃は麻薬取引のようにコソコソと渡されていた生理用品。
僕の母親が総理大臣になってから、「女性の立ち位置」がどんどん上がっていき、生理用品を隠す必要も無くなったらしい。
大学内で世界性戦についてほぼ全員が話題にしていた。
「俺たちも戦争に行かされるのか?女を守る為に?」
「女の権利を主張するなら女が戦場に立てよな。」
チラチラと視線を感じる。発言者が母親だと周りのみんなもわかっているからだ。
「お前は戦争に行かなくていいんだろ?政治家の息子だもんな。好き勝手にお前の親が言ってるのにお前は責任取らなくて済むんだもんな。」
僕は拳をグッと握りしめた。僕が行かなくていい訳がないだろ。徴兵されるに決まってる。それくらい家族の中で立場がないんだ。
情けなくて言葉にできなかった。ただひたすら人の視線を避けて過ごした。
案の定、もちろん徴兵された。軍服は全員揃ってスカートだ。理由は、「地上戦の際にトイレをしやすいから」らしい。
男女平等だな。最高だな。僕は鼻で笑う。
こんな狂った国、何の目標もない国。誰の意思も尊重されていない国。もちろん戦争なんてうまくいく訳がない。
命からがら逃げ出した先、中国人に肩を撃ち抜かれた。うずくまって倒れた。空を見上げることしかできなかった。
「生きてんだ」
中国語だ。政治関連で、僕が使い物にならないと家族の一致が起きるまでの間に叩き込まれた外交手段。
「もうすぐ死ぬよ」と答えた。肩が痛い。痛いというか熱い。
僕の真上までその中国人はやってきた。下からパンツが見えた。女性を守る為に18禁などという制度もなくなり、アダルトは厳禁とされている国日本。
初めてパンツが見えて、目がいってしまった。
「最後に見るのがパンツなんだね。気持ち悪いよ」
この一言を浴びせかけられた瞬間、銃声と共に僕の命は絶えた。絶えたはずだった。
目が覚めた途端、迷彩服のコスプレを着、銃を持ったままの僕は秋葉原のコミケ会場の中に居た。
コミケの中だと、「銃を持った迷彩柄のスカートの男性」は
コスプレだと認識されているので浮くことは無い。
むしろもっと過激な格好した女の子でいっぱいだ。
僕は一瞬で悟った。
「ここは社会の教科書に害悪の歴史として載ってたコミケだ」