リログVSナーガ
リログの大剣とナーガの剣がぶつかり合い、激しい金属音が木霊する。
大剣を振り回すリログに対し、ナーガは上手く盾と剣と持ち前の鱗を用いて否している。
「上手いこと全部防ぎやがって。技使うか、キリないわ。」
全てを防がれたことにより、攻めあぐねていたリログは大剣を突きの構えで持ち、狙いを定める。
「その盾と鱗で防げるもんなら防いでみろや!ファイヤー・バレット!!!」
リログの技を見て、ナーガはすぐ様体を丸くした。
「シュロロ。シェルアーマー!」
ナーガは技を発動し、リログの技を防いだ。
「シュロロ、残念だったな。我のスキルは殻であり、人間ごときの攻撃など無意味なのだ。」
全霊を込めて放った技をあっさりと防がれ、リログは苦笑いするのがやっとであった。ナーガを覆う鱗や、盾ぐらいであれば貫けると考えていたところに、さらに強力な殻が出てきたのだ。焦る気持ちを抑えながら、策を練る。
だが、今は戦闘中であり、悠長に考えている暇などないに等しい。
リログが考えている間も、ナーガは遠慮なく攻撃を仕掛けてくる。
「シュロロ、何を考えているかわからんが、これで終わりだ!シェルミサイル!」
ナーガは思考を巡らせるリログに対し、容赦なく技を撃ち込む。
ナーガの体から生み出された無数の殻がリログ目掛けて飛翔する。一つ一つの威力はそれほど高くはないが、その圧倒的な数に全てを防ぎ切るのは不可能といっても過言ではなかった。
「くそ、数が多すぎや。何とか、攻撃を当ててもあの鱗は斬れへんし。焔を出せばあの厄介な殻があるし…。」
リログは様々なことを考える中で、1つの可能性に気づいた。もしそれをできるのであれば、ナーガを倒すことができる。
考えをまとめたリログはナーガの攻撃を何とか耐えつつ、攻撃に転じていた。
「シュロロ、逃げてばかりでは勝てぬぞ。」
「うるさいわ!喰らえ!」
リログはナーガの言葉に反発しつつ、大剣を振るう。ナーガは防ぐこともせず、鱗で攻撃を耐えてみせた。
やはり、とリログは思った。ナーガは腹部への大剣での攻撃は剣と盾で防ぐが、今のような横薙ぎは鱗で耐える。そして、スキルを使用した技を放てば同じくスキルを使用した技で受けてくる。これは直接ダメージを受けるからであろう。
そこでリログは行動を起こす。
「ファイヤー・バレット!!!」
「シュロロ、それは効かぬと知ったであろう。シェルアーマー!」
「知るか!何発でも撃ったるわ!ファイヤー・バレット!!!」
リログは効かぬとわかっていながら、ナーガに同じ技を連続して発動する。
「シュロロ、無駄なことを。」
無駄だと分かりきっているにも関わらず、攻撃を止めようとしないリログに対し、ナーガは呆れ、興味の対象から消え失せていた。
「シュロロ、少しは楽しめると思っていたが、どうやら思い過ごしだったな。死ね。シェルミサイル!」
リログは無数に飛来する殻から、何とか致命傷を避けるよう、大剣でガードして技を受けた。
左肩、右足、右下腹部、とかわしきることができず、技を喰らった箇所は流血し、ナーガから生成された殻が刺さったままであった。
「シュロロ、今のも耐えたか。人間にしてはやはり少しはやるようだ。」
「さっきから人間、人間てやかましい。見せたるわ、人間様の底力を。」
ボロボロになりながらも、大剣を構え直した。そして、大きく息を吐き出し、呼吸を整え、集中力を高める。
戦闘の中で、リログは自分の可能性にかけていたのだ。
もし、この技を出すことができたら、俺はさらに強くなれる。ただ、撃ち出すだけじゃなく、これさえできれば。
リログの集中力と共に、剣が熱を帯び、薄らと赤みを帯びていく。
そして、一気にナーガとの距離を詰めて、大剣を思い切り振り抜こうとした。
「シュロロ、大剣での攻撃は効かぬと何度すればわかるのだ、愚か者め!」
ナーガはこれまでの攻撃同様、敵が効かない攻撃をしてくることに少しの怒りを覚えながら鱗で受けようとした。
その行動を見て、リログは敵の油断を確信する。
「俺の普通の攻撃が効かんくてよかったわ。これで、終わりや!ヒート・スラッシュ!!!」
リログは振りかぶっていた大剣に焔を纏わせ、ナーガを真っ二つに斬った。
「シュロロ、馬鹿な。ただ、焔を撃ち出すしかできないのではないのか…!?」
「アホか。人間はな、闘いの中で進化していくねん。」
真っ二つに両断されたナーガはそのまま消え去り、魔石が地面に転がった。
リログ対ナーガは、リログの勝利で幕を閉じた。