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ペンタグラム  作者: 白絵
魔王軍との接触編
5/16


ー夜ー


一行が泊まっている空き家に複数の影が忍び寄っていた。

そのうちの1人が窓から中を確認し、状況の把握を急いだ。


そして、中の様子を確認し終えた代表格の人物が突入の合図を送ろうとしたその時、


「何をするつもりか知らないけど、喧嘩なら僕が買おうか?」


と、空き家を取り囲んでいる影に向かい、声が掛けられた。

上空を見上げると、屋根の上に腰掛け、月明かりで本を読む1人の人物が居た。

「どうして…。なんで起きてるのよ!まさか、私たちに気付いていながらわざと…。」


人影の代表格は声の主に対して、怒りを顕にしながら問う。

声の主は人影の代表格とは真逆で、冷静に淡々と問いに答えるのみである。


「わざとじゃないさ。疑問もあったけど、厚意には感謝もしている。だけど、空き家を使い回すならきちんと掃除をしておくべきだったね。最初は気づかなかったけど、数箇所に血が擦れたような跡を見つけたのさ。」


代表格は思わず歯を食いしばる。迂闊であった。まだ冒険に出たばかりの風貌に油断し、判断を誤ったことを悔いたのだ。


この者たち程度であれば簡単にことをはこべると慢心していたのだ。


「そろそろ、顔を覆っているマントを取ったらどうかな?エナさん?」


屋根の上に居る人物は本を閉じ、立ち上がりながら人影の代表格に伝えた。


代表格はマントを取りながら、未だ収まらぬ怒りを言霊に乗せる。

「どうして私だってわかったのかしら?」


「簡単なことだよ。まず、貴方ほどの人が街道で倒れているのがそもそもおかしかったのさ。そして、もし仮に、本当に倒れていたとしたら、普通そのあとはゆっくり休むはず。街の様子を見るに、言い方が悪いかもしれないけれど、それほど活気があるわけでもない。なのに、街を探索していたアザーとリログが見かけたと言っていた。」


「ご明察ね。その通りよ。私は貴方たちを油断させるために罠を張ったにすぎないわ。それに気づいたのは褒めてあげる。けれど、この人数を相手に1人で戦うっていうのは、貴方のただの慢心じゃないの?」


「別に貴方たちを倒す必要がないから、僕1人でも十分なのさ。戦闘不能にすればそれで勝ちだからね。」


「その生意気な口、今に閉ざしてあげるわ!貴方がどんな能力を持っていようと、人数差で押し切ってあげる!」


「それじゃあ、行くよ?あ、あと僕の名前はクロ。以後お見知り置きを。」


「減らず口を。みんな、やっちゃって!!!」


エナの号令を合図に人影から技が飛び出す。

火、水、土、風、雷、様々な技がクロ目掛けて飛び出した。


開戦と同時に、中から様子を伺っていた4人も動き出す。


クロに集中する人を1人、また1人と戦闘不能にしていく。

そしてクロも攻撃を避けながら技を放つ。


「グラビダン!!!」


クロの放った技が人影を捉え、付与された重力によりその場に這い蹲る。


そして瞬く間にエナを除く人影を戦闘不能にした。

「これほどとは、予想外だったわ。だけど、私1人だからって油断しないことね。」


エナはそういうと、マントを捨て、クロに殴りかかった。

マントで覆われていた体には大きな痣のようなものがいくつもあり、一行は絶句する。

クロももちろん驚きを隠せなかったが、何とかエナの拳を腕で受け流し、技を発動しようとする。しかし、エナはすぐさま蹴りを入れて技を発動させない。

エナの蹴りをまともに受け、クロはよろけたが、そこにアザーが殴りかかる。

「クロ、隙を見てグラビダンをエナさんに撃ち込んでな。後は拙者が対応するから。」


クロもそうであったが、アザー、リログ、セイカ、ノベーにも敵意はなく、話し合いをするために制止するために動いていた。


活気のない街、冒険者を襲う理由、双方の謎の答えがエナの体にある痣に関係していることは容易に想像できた。だからこそ、話を聞くために制止しようと考えていたのだ。


エナはとにかくがむしゃらにアザーに攻撃を仕掛ける。アザーはそれを上手く受け流しながら、隙を作る。しかし、それを察しているエナは警戒を解くことなく、アザーに向かい合っていた。

クロやリログとの対人戦は幾度となくこなしてきたアザーにとっても、エナは手強い相手であった。


だが、アザーには完璧に隙を作る技があるのだ。


それを知らず、エナはアザーに再度攻撃を仕掛ける。

その時。

「みんな、拙者輝くぞー!!!」

エナはアザーがいきなり発した言葉の意味を理解できなかった。

しかし、クロ、リログ、セイカ、ノベーは瞬時に目を瞑り、腕で目を覆った。


エナは言葉の意味を理解する必要がないと判断し、そのままアザーに殴りかかる。


「フラッシュ!!!」


アザーがそう発した瞬間、エナの目の前が真っ白になった。



「グラビダン!!!」

アザーが技を放ち、エナが立ち尽くした瞬間、クロはすかさずエナに技を放ち、動きを完全に止めた。


「くっ。まさか、目眩しだとは思わなかったわ。それに、重力も付与されちゃったみたいね。けど…ヒール!!!」


エナが唱えた技名に一同は驚きを隠せなかった。ヒール。即ち回復をしたのだ。


「残念だったわね。私の勝ちよ!」


エナはそういうと再びアザーに攻撃を仕掛けた。

しかし、技を使用しないことを前提にした戦闘ならば、アザーはほぼ100%負けることはなかった。まして、回復したとはいえ、少なからずクロの重力が効いている状況であれば、それはもう100%と言っても過言ではない。


アザーはエナを簡単に制し、地に捩じ伏せた。


「エナさん、詳しい事情を聞かせてもらってもいいか?」


エナは怒りに身を任せていたが、アザーの強さに諦めがついたのか、大人しくなり了承した。


「ただ、その前にちょっとだけお願いがあるんだけど…。」


「ん?なんだ?」


「この痣は1日に1度のペースで激しい痛みを伴うの。だから、全員を回復させて?もちろん、貴女たちに再び反抗なんてしない。信じてもらえないかもしれないけど、私たちじゃ、貴方たちには敵わないもの。」


アザーはエナの願いを聞き受け、エナの拘束を解いた。これはエナの願いを優しさで聞いたのではなく、もし仮に反抗して来たとしても必ずまた同じ結果になることを確信しての行動であった。


拘束を解かれたエナはすぐさま両手を天に掲げ、技を発動する。

「オーロラヒール!!!」


エナが放ったオーロラヒールは小さいとはいえ街全体を覆い、住民全てを回復させた。

エナのスキルにより、街人の痣が少しだけ薄くなり大きさも一回りほど小さくなった。


「すごい回復量だよ、これは。」

「ほんまやな。むっちゃすごいわ。」


クロとリログは思わず言葉を零す。アザーももちろん、2人に同感であった。


「ありがとう。それじゃあ、約束通り、全てを話すね。」


これから、エナから聞く話に一行のはらわたは煮えくり返ることになるのであった。


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