とある男
夜が明けて、また馬車を走らせて数時間、一行は目的地でもあるラビットという小さな村に到着した。大きな木が中心に立っており、村はそれを囲う形で形成されている。村の前には大きな広場があり、スミとヒロを繋ぐ場所も用意されていた。
停泊の許可を得るため、一言声をかけようと住人を探していたのだが、村の外には誰も見当たらない状態であった。
馬車を降り、とりあえずスミとヒロの2頭の馬を繋いだ一行は辺りを見渡していた。
「誰もいねぇのか?この村?」
「そんなことはないはずだよ。作物が育っているし、それに、煙草の臭いもするからね。」
「どっかから見てるんやろな、これは。」
違和感を感じていた一行の前に、1人の男が現れた。その男は30歳くらいの見た目であり、ダル着で腰にグローブをぶら下げていた。グローブは指が出るタイプで、甲の部分には装飾が施されているのが見て取れる。また、佇まいからただ者ではない強さを感じた。その男は一行の前に現れるなり煙草にマッチで火をつけ、話しかけてきた。
「カッカッカッ、ご明察だ。みんな警戒してんだよ。略奪、征服、蹂躙。人も魔物も変わらず弱いもんのところへ来るからな。名前と目的は?それ次第なら歓迎するぜ?」
「拙者の名前はバルドル・アザー、この世界で1番すごいやつになって、すごいことをする男だ!」
アザーの自己紹介を聞き、1人の男は笑った。咥えていた煙草の火を消し、持っていた入れ物にしまうと目付きが変わる。
「カッカッカッ、そうか。歓迎するぜ?俺なりのな!!」
男はそういうと一行に襲いかかった。
一行は即座に臨戦態勢を取り、迎え撃つ。
その男は素手の一撃でリログを殴り飛ばし、クロを蹴飛ばした。
視線がリログとクロにいっている間に、アザーは攻撃を仕掛ける。
「拙者の仲間に何してくれてんだ!フラッシュ!!!」
アザーはフラッシュを発動した状態で男に殴り掛かる。男はアザーの攻撃を足蹴で逸らし、アザーを包む光が消えたところに拳を入れた。
アザーが吹き飛ばされたタイミングでセイカが技を発動する。
「雪の華!」
セイカの放つ技が男を凍てつかせようとするが、男はセイカの技を瞬時に理解し、躱した。
その躱した瞬間を起き上がっていたクロとリログが狙う。
「よくもやってくれたな!ヒート・スラッシュ改め、焔斬!!!」
リログが男の着地を狙い、焔を纏わせた一撃を入れる。しかし、これもギリギリのところで躱し、拳を叩き込む。
男がリログに攻撃したために生じた死角からクロが技を発動し、攻撃する。
「もらった!グラビゴウ改め、引波九斗!!!」
激しい重力の衝撃波が男を捕える直前、男が体を捻り、クロの死角から飛んできた蹴りがクロを捕え、当たる寸前で蹴飛ばされる。
「雪椿!」
クロを蹴飛ばした男にセイカが無数の氷の刃を放ち攻撃する。
降り注ぐ氷の刃を男は全て避け、攻撃直後のセイカに拳を入れようとする。
その攻撃を予測したノベーが男の拳を盾で防ぎ、カウンターを仕掛けた。
「強烈すぎますよぉ。けど、これでも喰らってください!辻風!!!」
ノベーは技を発動する。ノベーの周りを囲むように風が立ち篭めるが、男は立ち篭める風と真逆に回転し、ノベーの技を打ち消した。そしてすかさず連撃を入れる。
最初は耐えていたノベーも連続して繰り出される攻撃に耐えきれず、セイカ諸共ぶっ飛ばされてしまう。
「これで終いだ。」
全員を制圧したと思った男は煙草を咥えようとする。
「まだ終わりじゃない!オーロラ・ヒール!!!」
ほとんど戦闘不能となった5人に、エナの回復技が行き渡り、立ち上がる。そして、今度は一斉に攻撃を仕掛けた。
「終わるのはお前だ!エーリス・ライト!!!」
「引波九斗!!!」
「焔斬!!!」
「雪椿!」
「辻風!!!」
全員の攻撃を見て、男はまた笑った。
「カッカッカッ、想像以上だ!見せてやるよ、俺の技を。真空波!!!」
男は拳を前に突き出し、技を発動した。放たれた技は空気を揺らし、一行に激しい衝撃を与える。
男の技を喰らった一行はその場に倒れ、気絶した。これが一行にとって初めての敗北となった。




