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ペンタグラム  作者: 白絵
魔王軍との接触編
12/16

ONE


アザーが目覚めてから、要望もあり、食事を摂ることになった。最初は普通の食事の予定だったが、イタクァ達から解放された街の人々がどうしてもお礼をしたいと言ったため、街をあげての大宴会となった。

主役はもちろん、アザー、クロ、リログ、セイカ、ノベーの5人であり、食卓にはエナや次の領主になる人も参加した。


領主の話はエナにもあったのだが、私には荷が重いと辞退したため、エナの推薦もあり、長くエナを支えていた老人が任命された。


食卓に並べられた豪華な食事を満足行くまで食べ、少し落ち着いてからは色々な人が挨拶に来ていた。

それはイタクァに攫われ、領主の家に居た人たちも例外ではなく、この長く苦しい生活から解放された喜びと感謝の気持ちを伝えていた。


宴会も終わり、用意されていた部屋で全員が次の旅の準備をしていたときに、アザーが切り出す。


「エナさんが仲間になってくれたら最高だな。」


「確かにね!アザーが言っていた治療ができる人にピッタリだし、それに強いもんね。」


「後は誘ってみて来てくれるかやな。正直、この街を選ぶ可能性だって十分あるからな。」


唯一の懸念をリログが口にし、皆は押し黙る。エナにとって、この街が心の底から大切なものであることは、全員理解していたからである。


「厳しいですかねぇ、やっぱり。」


ノベーが言った言葉に対して、誰も何も言わず考え込むほど、全員が重々承知していたのだ。ただ1人を除いて。


「…誘ってみたら?」


何の悪びれもなく、ただ一言、全員がそうしたいと思うことをセイカはあっさりと言ってのけた。


セイカの言葉で、全員の考えがまとまる。1度誘って、それでダメなら仕方ない。けれど、誘いもしないで諦めるのは自分たちらしくない。



ー翌日ー


それぞれが旅に必要なものを揃えるため、買い物に出ていた。歩いていれば、待ち行く人が5人に声をかけてくれる。

そんな中、エナを見かけ、そのまま合流して案内をしてもらった。


買い物を済ませ、食事をするために店に入り、待っている時間にアザーがエナに問いかけた。


「ずっと気になってたことなんだけど、魔王軍最高幹部ってなんだ?」


アザーをはじめ、皆ずっと気になっていたのだ。魔王が居るのは知っている。1つの目標として、魔王を倒すことをあげているのだから、当然である。しかし、魔王軍最高幹部というのは聞き馴染みがなかった。


アザーの質問にエナは丁寧に答えてくれる。


「魔王軍最高幹部というのは、魔王に仕える7人の魔物よ。普段は各地で支配した街を統治しているんだけど、魔王に忠誠を誓っていて、何かあれば魔王城に集結するの。噂だけど、どの魔物もかなり強いと有名なの。私たちの街を襲ったのもその1人で、空間の支配者ハスターという奴よ。」


「あのイタクァより更に強い敵ってことか。」


「ええ。他の魔王軍最高幹部もそう。雷帝ソロモン、大海のティアマット、堕天使ルシファー、灼熱地獄ヴリトラ、毒龍ニーズヘッグ、氷の女神ダークエルフ。この7体の魔物で構成されていて、それぞれの幹部の部下も強力なのが揃っているわ。イタクァはその中でもスキルは強力だけど、弱い方よ。」


エナの答えを聞き、全員沈黙してしまう。エナも不安になったのか、バツが悪そうに視線を下に落としていた。しかし、ーー


「アイツより強いやつがそんないっぱいいるのか!ワクワクしてきたー!!!」


「やれやれ、そう言うと思ったよ。」


「むっちゃ燃えるな、これは!」


「…ワクワク。」


「今度は私も活躍してみせますよぉ。」


杞憂であった。エナはこの沈黙が不安によるものではなく、興奮によるものであることを知り、安堵の表情を浮かべた。


一通り自分たちの思いを言い合った5人は本題に入るべく、エナに向き直った。そして、アザーが前に出る。


「拙者たちは旅をしながら、この世界を全て見て回ろうと思ってる。それにはエナさん、あんたの力が必要だ。拙者らと一緒に来ないか?」


アザーはそう言いながら、右手を差し出した。アザーの言葉に、エナは驚いた。まさか、自分が誘われるなんて思っていなかったからだ。そして、ゆっくりと考える。


これまでは、イタクァによる支配があり、自分がこの街の住人を助けるために頑張ってきた。しかし、それももう終わった。長く続いた支配もアザーたちが解放してくれたのだ。


返しきれない恩があり、少しでも彼らにそれを返せればと思っていたエナは考えをまとめる。


この人達となら、どこまででも行ける。無茶をした時に、私が回復すれば、更にこの人たちの冒険も豊かなものになる。

それに、この街はもう大丈夫。強い結束があり、どんなことでもきっと乗り越えていける。だから、ーー


「君たちがどれだけ負傷しても、私が治してあげる。これから、よろしくね!それと、敬語もさん付けも禁止なら、一緒に行くわ!」


差し出された右手を握り、笑顔で了承した。

そして、ステータスを開示する。


ステータス

名前:ヴァンディ・エナ

年齢:18歳

スキル:回復

武器:ナックルナイフ

備考:温厚で責任感が強い。誰とでも仲良く話すことができる。


「ヴァンディ・エナ。今日からお世話になります!」


そう元気よく告げた。


そして、それぞれが準備を終え、ドッグーを旅立とうとしていた。

見送りには街の住人全員が来てくれていた。


「皆様、この街を救っていただき、本当にありがとうございました。感謝してもしきれません。」


「拙者たちが勝手に動いただけだから、気にしなくていいよ。」


「ありがとう。それと、エナをよろしくお願いします。あの子はずっと街のために過ごしていた。だから、素晴らしい旅にしてあげてください。」


「それは拙者らが保証する。冒険を終えたら、またここに来るよ。」


新しい領主から感謝の言葉とエナのことを頼まれたアザーは笑顔で答えた。


「よし、じゃあ出発しよう!」


「乗ってへんのお前だけや。置いてくぞ?」


「ええ!?待て待て、今拙者、領主さんと感動的な話してたところだったじゃん!」


馬車に乗り込んだ一行に、街の住人から感謝の言葉が投げかけられる。そして、エナにはエールと別れの言葉を。


「みんなー!!!行ってきまーす!!!」


エナは目に涙を浮かべながら、それでも笑って、大きく両手を降っていた。


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