光の射す方へ
苦しみながら、立ち上がったアザーに、苦しみもがく人々に、七色の優しく温かい光が降り注ぐ。
その光はイタクァのウイルスを中和し、少しずつ治療していく。
「ハーッハッハッハッハ。今頃になって何をしに来た、エナ。俺様の邪魔をしやがって。まずは貴様を八つ裂きにしてやろう。」
「このまま、あんたに従って一生暮らしていくくらいなら、その方がマシかもね。私は、この人たちに賭けたの。街にいる皆もそうよ。もう、あんたの言う通りに生きるのは辞めたの。」
イタクァはエナの言葉を聞き、怒りを顕にしながら、攻撃の手を向けるべく、魔力をまた練り上げる。
「おい、お前の相手は拙者だ。フラッシュ!!!」
エナの方を向いていたイタクァはすぐ様、アザーに向き直った。しかし、フラッシュを発動したアザーの拳を避ける術はなく、殴り飛ばされる。
イタクァはすぐ様立ち上がり、アザーを睨みつける。
アザーもまた、イタクァから目を離すことなく、倒すべき対象として狙いを定める。
「ハーッハッハッハッハ。この街で生まれたことを後悔させてやる。俺様が貴様らみたいなゴミ共に負けるわけがない!」
イタクァの言葉に、エナは少し足がすくみ、フルフルと震え出した。
エナの技により、辛うじて動けるようになっていた人々も、その場から動かず、ただ下を向いているだけであった。
「言いたいことはそれだけか?」
そんなイタクァの言葉を聞いた後でさえ、アザーは表情を変えることなく、ただ勝つために魔力を集中させていた。
「ハーッハッハッハッハ。ダメージを与えられるからなんだと言うのだ。俺様と貴様では実力が違う!これで終わりだ!貴様を殺し、この街の者も皆殺しだ!ウイルス・ランス!」
イタクァは残りの全ての魔力を使い、アザーを殺すために技を発動する。
莫大な量のウイルスを槍状にし、そのままアザーに向けて放った。
「簡単に、殺すとか言ってんじゃえねぇ!お前なんかにこれ以上この街の人にも、拙者の仲間にも、何もさせねぇ!エーリス・ライト!!!」
アザーは怒りとともに、新たな技を発動する。右手に集中された、莫大な量の光はまるで羊の毛のように拳を覆い、イタクァが放ったウイルス・ランスを吹き飛ばし、勢いをそのままにしてイタクァに直撃する。
「俺様が、、、いずれ魔王軍最高幹部になるこの俺様が、こんな奴らに、、、」
「お前はやり過ぎた!お前が居るせいで、苦しむ人がいる!お前なんかに、俺もこの街も負けない!!!」
アザーの放った一撃はイタクァを吹き飛ばし、辺り一面を眩い光で包み込んだ。それは、エナがアザー達を回復させた温かい光とは違い、人々に希望と勇気を与える力強い光となった。
イタクァが消え、アザーの目の前に魔石が転がったのと同時に、アザーやエナ、元領主宅に連れてこられた人々、そして街の人々を苦しめていたウイルスによる痣が消えた。
「痣が…消えてる。もう、あんなことしなくて済むんだ。よかった…。」
エナは安堵し、頬に一筋の涙を流しながらそう呟いた。
激闘を終えたアザーはドサッという音と共にその場に倒れ込み、深い眠りについた。
同じく、クロ、リログも負った傷と疲労からその場に倒れ込み、眠っていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ー2日後ー
爽やかな風と温かい日の光を浴びながら、アザーが目を覚ました。
「寝てたのか。・・・。腹減ったな。」
アザーは体を起こし、頭を掻きながら大きな欠伸をした。
ガチャっという扉が開く音とともに、クロとノベーが入ってきた。
「目覚めたんだね、アザー。」
「調子はどうですかい?」
「まあ、何とか大丈夫そう。けど、腹減った。」
「あのあと、魔力のほとんどを消費してずっと寝てましたからねぇ。」
「クロも中々ボロボロになってたのによく起きてるな!」
「僕の場合、ただ傷が酷かっただけだから、エナさんのお陰で何とかなったんだよ。それに、リログも次の日には元気になって街に行っていたよ!」
そんな会話をしているとまた、扉が開く音がして、今度はリログ、セイカ、エナが部屋に入ってきた。
「起きたんか。調子はどうや?」
「…大丈夫そ?」
リログ、セイカが心配の声を掛けてくれる。そして、エナも。
「無事でよかった。今回は、本当にありがとう。あんなことをしたのに、助けてくれて。」
そう言いながら、また涙を流し始めた。
それほど、この4年という期間は辛く苦しいものであったことを物語っていた。




