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ペンタグラム  作者: 白絵
魔王軍との接触編
10/16

希望、絶望、また希望


アザーとイタクァによる激しい攻防が続く。アザーの拳がヒットすれば、すかさずイタクァもカウンターを仕掛ける。

単純な体術なら、アザーに部があるが、イタクァは自身の頑丈さを武器に、技によるカウンターをメインとしていた。



何回当てたかわからないけど、拙者の攻撃が全然効いてないのが痛い。あとは、1番最初に当たってしまったこの左腕の痣が少しずつ広がってきている。今のところ痛みがあるだけで、それ以外の異常はないけど、ちょっと気にしておいた方が良さそうだ。


「ハーっハッハッハ。どうした?貴様の攻撃、俺様には微塵も効いておらんぞ。」


「んなこと、拙者が1番わかってるわ!」


アザーは様々なことを考えていた。


拙者の中で、今あいつに知られていないのは10秒ほど光ることができるフラッシュのみ。けど、フラッシュはただ光るだけで目眩しくらいにしかならない。これは相手の攻撃から逃れる時に取っておいた方が良さそうだし、短剣で斬りかかっても、効果は無さそうだし。

クソったれ!なんであんなに硬いんだよ。どこかに弱点はないか。


イタクァと一定の距離を取りながら、隅々まで観察するが、どうにも手段が思い浮かばない。となると、最初に宣言した通り、相手の防御が壊れるまで殴り続けるしかない。


ふぅ。っと息を吐き、アザーは初志貫徹するべく、覚悟を決め、攻撃に移った。


攻撃は当たる。だが、効いているかと言われればそうではない。先程から、同じことの繰り返しであった。イタクァは別段、圧倒的な力を持っているわけではなかった。ただ、現状のアザーにはとてつもなく硬いだけであり、ダメージさえ入ればそれほど苦戦する敵ではなかった。しかし、現状は圧倒されていた。


「ハーッハッハッハッハ。そろそろ終わりにしようか。俺様の前に為す術なく散るがよい。」


アザーの攻撃にあわせ、イタクァは渾身の一撃を喰らわせるべく、技を発動する。


「ウイルス・クラッシュ!」


イタクァの右手に禍々しいウイルスが生成され、掌底と共にアザーの左脇腹付近を撃ち抜こうとしていた。


やばい。

アザーはイタクァを思いっきり殴る動作に入っていたため、この技を避ける術がなかった。ギリギリの状況下で、一縷の望みである技を発動する他には何の可能性も見出せていなかった。



「ウォォォォオオオオ!!!フラッシュ!!!」


雄叫びと共に、アザーの体が光り輝く。目眩しをし、イタクァの技を回避しようと望みをかけた技であった。しかし、イタクァの技はアザーを確実に捕らえていた。

同時に、アザーの拳もイタクァの頬を捕らえている。グシャッと子気味良い音を立てながら、アザーは吹き飛ばされ、地面に倒れ込む。


「やばいやばいやばい!まともに喰らってしまった。死ぬー!しーぬー!!!…て、あれ?痛くない?」


イタクァの掌底を左脇腹付近に受け、死をも覚悟したアザーであったが、何故か痛みがなかった。そして、恐る恐る服を上げ、攻撃を受けた場所を確認したが、何も無かった。


そしてもう1つ。アザーとは真逆の反応をしていたイタクァに目がいった。


「グォォオアア!ハァ…ハァ…。ハーッハッハッハッハ。やるではないか。まさか、このような力を隠し持っていたとは…。」


頬にヒビが入ったイタクァがダメージを受け、もがいていたのである。

イタクァの攻撃を受ける瞬間、行動を変えることができず、そのまま振るった拳はたしかに、イタクァを捕らえたが、これまで同様、ダメージを与えることはできないと思っていたアザーはある1つの可能性に気付いた。



今のこの感じ。まさか、フラッシュは数秒間、無敵になれるのかもしれない。相手の攻撃をまともに喰らっても傷1つないこと、相手にダメージを与えられたこと、もしフラッシュを一点に集中することができれば、あいつを倒せるのかもしれない。


アザーは見出した可能性を信じ、右手に光を集中するべく、力を込める。



セイカとノベーはイタクァに支配され、動かされている人々を傷つけないよう、細心の注意を払いつつ、制圧していた。

人々も本気で攻撃をするのではなく、形だけ見せるような状態であった。

無謀にもこの場所にやって来て、イタクァ達に啖呵を切り、戦う若者にみな、ほんの少しだけ期待していたのだ。


そしてそんな中、自分たちでは倒すことができなかったナーガ、トロールをそれぞれが倒したことで、期待は希望へと変化していた。

加えて、あのイタクァがダメージを受け、声を上げたのだ。


もはや、人々の視界にはアザー対イタクァの戦闘しか入っていなかった。



イタクァはそれでも尚、邪悪な嗤いを浮かべながら、立ち上がる。その目には怒りを宿しながら。


「ハーッハッハッハッハ。少しばかり闘えるようになったからどうだと言うのだ。住人どもも希望でも持ったか?今からそれ以上の絶望を与えてやろう。」


イタクァはそう高らかに宣言すると、魔力を溢れさせる。どす黒い魔力を全身に纏うイタクァは技を発動した。


「ウイルス・バスター!」


イタクァが技を発動するために、指を鳴らす。すると、アザーや人々がもがき苦しみ出した。


「うぁぁぁぁあああああ!!!」


アザーは左腕を抑えながら、倒れ込み、悲痛な叫びをあげる。それに呼応するかのように、人々もどこかしらを抑えながら、苦しんでいた。


「…なに、これ?」


「これはかなりまずいことになっていそうですねぇ、セイカさん。」


人々の制止を任されていたセイカとノベーも、続々と倒れ伏す人達を見て、動揺を隠せずに居た。


「ハーッハッハッハッハ。俺様のウイルスは、一度受ければ体内から体を蝕む。俺様を倒さない限りな。そして、今の技は体内にあるウイルスを暴発させる技だ。もがき苦しみ、そして死ね。俺様の前に、希望を抱くことも愚かであったと後悔するが良い。」


絶望的な状況の中、それでもアザーは立ち上がる。痛みを耐えながら。


「ハーッハッハッハッハ。まだ立ち上がるのか?」


「当たり前だ!約束したんだよ、拙者らは。何の関係もない、ただこの街で平和に暮らしたいと願っていながら、お前なんかに支配されてしまった人達に、必ずお前を倒すと。」


「ハーッハッハッハッハ。それも無駄なことだったと知るがよい。英雄気取りの小僧共に命をかけて加勢する者は居ないのが現実だ。貴様らはここで全員、俺様の手によって死ぬのだ。」


希望が絶望へと変化しそうになったその時。


「オーロラ・ヒール!!!」


アザーや人々を苦しめていたウイルスによる痛みが、オーロラ・ヒールにより、和らいだ。


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