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エンド・オブ・フォーマルハウト  作者: まきえ
<CHAPTER 03/一難去って/WORKING>

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14/31

Paragraph 2/南国物語/Tropical


「――やってきたぜ! O☆KI☆NA☆WA!!」


 夏喜とジューダスが乗った飛行機が降り立った先は、日本において最南端の都道府県で試される大地・北海道と対をなす観光地、沖縄県。構成する県域がほぼ亜熱帯であり、日本本州とは違った環境故に南国と称され、年間を通して温暖であり、雪も降ることはない。が、――


「寒い!? えっ、意外と沖縄寒い!?」


 水槽に入った色とりどりの魚が出迎えた到着ロビーから空港の外に出た夏喜に、沖縄の冷たい風が押し寄せた。


「さすがの南国地も、この季節は寒いだろう。飛行機の中で軽装に変えたお前が悪い」


 ジューダスの言う通り、暦は立冬を超えた辺り。海が近く、年中風が強い沖縄の地は、体感温度は割と下がるものである。


「それにイギリス並みに曇ってる!? なんで、わたしの夢見た南国は!?」

「ふむ。『夏は暑く日も強いが、風があり気持ちいい気候。だが冬は天気が悪い日も多く、風も強いため体感温度は低い。地元の人は20℃前後でもダウンジャケットを来ている』、そうだぞ」

「観光ブック片手に何を当然のように!?」


 ちなみに、夏喜が以前に沖縄に来たのは10年ほど前の夏であり、なぜか南国は冬でも暖かいと思っていたようである。


「さむさむ。期待してたのと違う・・・・・・」


 そそくさと長袖を取り出し羽織る夏喜。沖縄に到着したのは良いが、次の指示は未だない。


「一度中に戻りましょう。お腹も空いたし、沖縄のビールも飲みたい」

「酒は指示があるまで待て。だが、腹ごしらえは必要だろうな」


 強い風から逃れるため再び空港内に戻ろうと踵を返した夏喜に、――


「――倉山夏喜様ですね。お待ちしておりました」


 自動ドアの先で、独特な着物姿の女性が立っていた。


///


「――わたくし、外間(ほかま)麗蘭(れいらん)と申します」


 鮮やかな赤い着物――琉装と呼ばれる沖縄の民族衣装――を召した女性に先導され、空港内にある飲食店で対面して着席した。


 沖縄ならどこにでもあるファーストフード店ではあるが、アメリカナイズされた店内とは見事に不釣り合いであった。


 麗蘭のチョイスでそれぞれの前に置かれたジョッキに入った飲み物は、クセのある薬草のような匂いを出しており、夏喜がかなり警戒している傍で何食わぬ顔でジューダスと麗蘭が口をつけた。


「それで、君が今回の依頼人かしら」


 傍らでジューダスが小声でうまいという中、夏喜は仕事の話をしようとしている。単純に、目の前の女性がお店の雰囲気と合わなさ過ぎて悪目立ちしているため、早々に切り上げようとしていた。


「はい。齢は32です」

「いや、年齢は聞いてないから」

「はい。独身です。ですが娘がいます。高校生です」

「わたし、パーソナルなこと聞いたかしら・・・・・・」


 聞いてもいない個人情報を続ける麗蘭だが、彼女の顔は常に真剣である。


「まあいいわ。それで、内容は何かしら」

「はい。わたくし、《《ノロ》》をしております。由緒正しいですが、廃れつつある身です」


 『ノロ』とは、沖縄地域で琉球神道における女性のみの祭司であり、世襲制で就くことのできる(かんなぎ)である。民間の巫女は『ユタ』と呼ばれるが、両者は明確な線引きがなされ、ノロは公的な祭祀者の立ち位置で存在している。


「珍しいわね。ノロもユタも噂では老人だらけって聞いてたけど」

「はい。わたくしも昨年逝去した祖母から継いだ新米でございます」

「神道におけるシャーマン、だな。この地域は日本神道とは違う信仰があるのだろう。その最高位自らとは、ただ事ではないようだな」


 ジューダスの前に置かれたジョッキサイズの飲み物はすでに空になっていた。


「はい。現役のノロはわたくし以外はすべて高齢であり、俗に言う排他的です。そのため、この問題を解決するための手助けは一切ございません。それは、わたくしからもです」

「ずいぶんと勝手な依頼ね。何があっても責任は取らないってことじゃない」

「はい。申し訳ございません。このような事態であっても、伝統を護ることが最大の責務でございますから。面倒事だとわかっているからこそ、依頼を受けてくださるかは話を聞いてから判断しても構いません」

「いいわ。まずは聞かせてもらえるかしら」


「はい。ではーー」




_go to "Kannagi".


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