Paragraph 4/紫桃家の食卓/Familia
「ようこそ我が家へ。夏喜さん、ジューダスさん、ゆっくりしていってください」
藍那の無茶振りを二つ返事で快諾した紫桃宗谷の運転で到着した紫桃家は、住宅街から少し離れた場所にあり、3人暮らしとしては大きめな3階建てのログハウスだった。宗谷の仕事が不動産関係ということもあり、格安な別荘物件を手に入れたそうだが、やはり格安には十分な理由があった。
「平たく言えば事故物件ですが、僕達にとってはあまり瑕疵にならないので。そこは美味しく頂きました」
心理的瑕疵が伴う事故物件だが、『私達にとって』が意味する通り、紫桃家は夏喜の倉山家と同じように魔法に深い関わりのある一族であり、藍那の父はユーラシア大陸の中国を含む東側と東南アジアと日本を統括する第五魔法協会の大幹部の一人である。宗谷は婿養子ではあるが、彼の一族も第五魔法協会の管轄内にいるため、夏喜のことも昔から知っており、友人のような関係が続いている。
「君たちね、娘のために魔法から遠ざかるといっていたのに、そこは気にしないってどうなの?」
「え~。見えないものは別に怖くないし、見えても被害ないし、おばけってただのカマチョだもん」
「私もおばけみえないから怖くない。友達になりたいのに出てきてくれないから寂しい」
「オゥフ。肝が据わってやがる」
「オレまでお邪魔してよかったのか。オレの存在こそ忌避したいものだろう」
「ジューダスさんは夏喜さんの家族のようなものなので。僕達が離れたいのは魔法社会の仕来りのほうが強いので、そこは都合よく頂きます」
「絵に書いたようなクリスマスもハロウィンも正月も七夕も美味しい処取りの日本人だよ、君たちは」
急に人口が3人も増えても、さすがは元別荘のログハウスだけあって広々としていた。ソウジロウは葵に連れられて子供部屋へ遊びに行き、大人たちはリビングのソファーに座る。
「2階の部屋は余ってますのでご自由に使ってください。キッチン以外の水回りはありますので。3階はアイナの荷物が積み木状態なので、下手に触って崩れると怪我をされますので立ち入りはご遠慮ください」
「藍那、片付けくらいいい加減覚えろ。この家がきれいなのも全部宗谷君に任せているだろう」
「台所だけは私が片付けてます~。パパはお料理できないもの」
「いやはや、お恥ずかしい限りで」
「君も人が良すぎるぞ、宗谷君。まあいい。せっかく招いてくれたからゆっくりさせてもらおう。それに藍那。帰国の手引きをしてくれてありがとう。おかげで助かったよ」
「キャー! ナッちゃんのありがとうだけで身長伸びそう!」
「これ以上伸びるな。すでにジューダスよりでかいだろう」
ちなみにジューダスと宗谷の身長はだいたい175cm前後であるが、藍那は180cmくらいであった。
「子供たちは子供たちの時間がありますから、大人は大人たちの時間を過ごしましょうか」
宗谷はそう言うと鍵付きの棚を開け、ぎっしりと並べられた物を取り出す。ゴン、と重い音を立ててリビングのテーブルに並べられたのは、年季の入った酒瓶の数々だった。
「いい趣味だな、宗谷君」
「僕の趣味は酒集めくらいしかありませんから。冷蔵庫に各種ビールとシャンパン、ワインセラー内も充実してますので、お二人とも好きなものを開けてください」
「ほう、葡萄酒もあるのか。おすすめがあるのなら遠慮なく頂こう」
「おい、ジューダス。遠慮はしろよ。わたし達は一応客だぞ」
そう言う夏喜もちゃっかり冷蔵庫の扉を開けて高そうなシャンパンとビールを物色していた。藍那は人数分のグラスを用意し、宗谷は選んだワインをジューダスに手渡す。三者三様の銘柄を揃え、ログハウスに景気のいい音が響いた。
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「アイナママ~、ナッちゃんさ~ん。ソウジロウ眠いみたいだから寝か・・・・・・」
眠そうに目をこするソウジロウの手を引いた葵がリビングに顔を出すが、酒盛りが始まっていることに気付き、返事も聞くこと無く部屋に戻った。
「お部屋、決まらなさそうだから私の部屋で眠ろうか」
「ウン、・・・・・・眠い」
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