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龍と過ごす転生記  作者: 小西魚樹
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第一話 自己紹介

 意識は暗い闇の中。

 浮いているのか沈んでいるのか分からないこの場所で、いくつかの光が優人の周りに集結している。

 その光は、まるで何かを訴えているかのように点滅している。体は無いが、優人はその光に耳を傾けるようにイメージ。

 すると光はどんどん近づいてきて――、


 『こいつぁ、なんかあれだな。弱そうだ』

 『頼りなさそうだしね』

 『でも逆に何か期待できそうよ。賭けてみる?』

 『僕は反対だね』

 『残念。俺は賛成だからお前も来い』

 『私はどんな方でも受け入れますよ』

 『ボクはどちらでもいいです』

 『かーっ! お前はもう少しシャキッとせんか!』

 『意見が分かれていますね。どうします?』

 『皆、思うことはそれぞれあるだろう。だが、こいつで決まりだ』


 あらゆる声が聞こえた。

 声にこもっている気持ちはバラバラでも全員が自分のことを批判しているのは分かった。

 天国か地獄のどちらかに行く選定かと思ったが、光は優人をそのどっちかに導くことはせずにゆっくり薄れて消えていく。


▼▼▼


 頬をペチペチと叩かれる感触に意識が覚醒する。

 瞼を開けて最初に視界に入ったのは青空。当然だ自分は外にいたのだから。

 だが、不思議なことに、さっきまで感じていた焼けつくような痛みと煮えたぎるような熱が今はない。

 体を起こし、おもむろに首を動かして辺りを見回す。

 綺麗な緑の葉を纏った木々が優人を取り囲むように生い茂っている。


 ――あれ?


 彼は大都会の交差点にいたはずだが、今は比較的大違いな家一つない森の中。

 もちろん事故にあったことは覚えている。

 ひょっとしたら自分は命を取り留めて生きているのかもしれないという可能性が頭によぎるが、だとしたらこんな森の中で寝ていた理由が思いつかない。

 優人は顎に手を当てて考えていると――、

 

 「おい! いい加減こっちに気づけ!」


 不意に後ろから声が聞こえた。かなりデカい声だったため、優人は咄嗟に耳を塞ぐ。

 だが手遅れだったようで、鼓膜が痛い、耳がキーンとする。

 若干腹を立てるも、深呼吸をして抑える。からの振り向く。

 そこには一人の少女がいた。

 白髪のポニーテールに青色と黄色の瞳をして、優人と視線を合わせるようにしゃがみ込んでいる。

 変わった外見とあまりに近すぎる距離に優人は頭の中が真っ白になる。


 「やっと気づいたと思ったらなんだ! 寝ているのかお前は!?」


 少女は優人の意識があるか確かめるためるように手を振るが、それでもボーっとしている彼の頭を軽く弾く。

 そしてようやく現実に戻ってくる。


 「悪い、なんか自分の世界に入ってた」


 まだ状況の整理がついていないが、とりあえずそれは置いておくことにする。


 「え~っと、まずは自己紹介だな。俺は安曇優人。君は?」


 優人はコミュニケーションが苦手なため挨拶はどこかぎこちない。

 しかし少女はそんな彼のことは気にせずに、


 「よくぞ聞いてくれた! 私はこの世における七龍が一匹、『白龍』ハクアである。ユウトと言ったか? 私は龍なのだぞ!」


 ハクアと名乗った少女の年齢は見た限り十四、五ぐらいである。

 

 「思う存分、今を生きろ。だが後から振り返っても恥じない程度にな。今のは聞かなかったことにするから」


 優人はハクアの肩を軽く叩き、自分の二の舞を踏まないように助言。

 彼女は優人が何を指摘しているのか分からずキョトンとしているが、やがて合点がついたのか手をポンッと叩いて、


 「あぁ! もしかして信じていないのか! 無理もない。人間と会うのは数十年振りだしな」

 「鋼のメンタル!」


 的外れな答えに思わずツッコミをいれる。


 「鋼のめんたる? なんだそれ?」


 こうも理解が悪いと苛立ちよりも不安を覚える。

 不安によって頭が冷え、考える。

 人に会ったことで浮かれていたが、そもそも何故こんな場所にいるのか。

 それから彼女の変わった外見。

 染めていたり、カラーコンタクトなどなら納得できるが、場所がこんな森の中だ。不自然すぎる。

 そして彼の頭の中である一つの可能性が浮かび上がる。

 だが頷けない。

 理由がどうであれ、まだ完成度が高過ぎるイタズラとしても受け取れる。

 確かめる必要があるようだ。

 

 「なぁ、ここら辺に人が住んでいる所ってないか?」

 「む? 龍と会って生きて帰れると思ったか?」


 ゾッとした。

 決して彼女から殺意を感じる訳ではない。

 だが呼吸ができない。体中から嫌な汗が滝のように流れる。

 彼女はいつでも自分を消すことは可能だ。

 何故かそんな感じがする。


 「な~んて冗談だ。私は弱い者をいじめるのは好きではないからな。ワッハッハッハッ!」

 「笑えねぇよ!」


 緊張から解き放たれた彼のツッコミは凄まじかった。



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