ネオ・ブリザードの午後8時半劇場 ⑨
それは、みんなが寝静まった夜のこと……
と、ある田舎のコンビニでは、中肉中背の18〜20歳位のバイト男性が、バックヤードに下がり、缶ビールの補充をしていた。
バイト男性は缶ビールの補充を終え、バックヤードから出てくると、店の入り口近くのカウンターに戻り、私物の小説を手に取って読み始める。
誰もいない店内……しばし小説を読んでいたバイト男性は、ふと、その手を休め、カウンターの向かいにある、先ほど缶ビールを補充した冷蔵庫の上にある時計に目をやる。
時間は午前2時27分……窓の外を見れば、走っている車もまばらで、歩いている人もほとんどいない。
バイト男性は、窓の外に移していた視線を、ゆっくりと読んでいた小説に戻す。
…………正に、その時だった…………
突如、轟音とともに激しく横揺れをはじめる店内。それに驚いたバイト男性は、突然の出来事に泡を食い、小説を手に持ったまま立ち尽くしてしまう。
揺れはなおも強くなり、遂にその場に這いつくばってしまうバイト男性。
おさまる事の無い激しい横揺れ。轟音は突如、爆発音に変化し、店内は縦揺れにとって変わる。
それとともに中空に浮遊するバイト男性。
だが、それも一瞬の事で、次の瞬間にはバイト男性の体はなす術無く床に叩きつけられ、全身に今まで感じたことも無い衝撃が駆け巡る。
数分間、激痛にもだえ苦しんでいた男性は、右手でなんとかカウンターのへりを掴むと、余った左手で痛む身体を包み込む様に押さえながら立ち上がる。
一体、何が起こったのだろうか……訳の解らないバイト男性は、自然と窓の外に目をやる……
……その瞬間……
コンビニの窓の外を、翼を大層気持ちよく広げた、一体の翼竜が滑空して行ったでは無いか。
驚いたバイト男性は、コンビニの入り口に向かって歩いていき、電気の通っていない自動扉を、痛む身体に鞭打ちながら、無理やり左右にこじ開け、外に出る。
すると、そこにはバイト男性の見たことも無い光景が広がっていた……!!!!
これが本当の『コンビニワープ』…………
……おしまい。