魔界事変77 『『救済の雫』製造施設襲撃作戦ー作戦会議』
―「・・・イ!ダイゴロウ!」―
「ん~・・・もう時間か・・」
「ジャンヌさんに起こしてこいって言われたから起こしたよ。さっさと着替えないと!」
ワシを起こしてくれたのはシェラだった。どうやら夢も見ないほど深い眠りに落ちていたらしい。早く起きよう、そう思っていたはずだったが誰かに起こされてしまうとは・・・
刀を持っていこう、と思ったが手元に無い。どうしたことかと記憶をさかのぼると、ジーナと戦ったときにカレキの森に落としたままだったのを思い出した。
打たれた影響か、大切な得物を失ったことへのショックか、頭がズキンと痛む。・・・とにかくもう一本の小刀だけ持って、言われたとおりに作戦室へ行くことにした。
・・・・・・・・・
・・・・・・・
「・・・よし。ジーナ、ダイ、シェラ・・・全員集まったな。」
作戦室に集まった面々を見て、ジャンヌはそう言った。
『皇子は?』
ジーナがこの場に一人いないことに気づき、ジャンヌに尋ねた。
「皇子は今まさに修行中だ。戦い方を一から教えてやっている。とりあえず休憩しろと言ってここに来ているわけだ。・・・つまり・・・」
「どこかのねぼすけさんは少しでも長く休憩できるように取り計らってくれたのだろう。なにせ素人に戦い方を教え込むのは教える側、教わる側双方疲れるからな」
ジャンヌがそう皮肉るように言うと、その場の皆の目線は黒髪の剣士に向けられた。
「いや・・・その・・・申し訳ない・・」
ダイゴロウが頭を深々と下げたのを見ると、ジャンヌは手元に用意していた大きな獣皮紙を皆に見えるように机に広げた。
「見てくれ。こいつはカレキの森深部の製造施設の見取り図だ。ここでは幼子の魂を加工して薬物を精製しているのは諸君の知るところだと思う。だが内偵による調査で特殊な「半生命体」なる何かも製造しているらしいという事が判明した。」
ジャンヌはこれがその協力者の描いた半生命体の図像だと言って、また小さな紙を取り出した。
・・・真っ黒な粘液が人をかたどったような・・・
『コイツ!!城デ見たゾ!!魔王が殺されタ時に襲っテ来て!何匹やってモ減らなかっタ!』
「そうだ。こいつらは何者かに操作されて動くようだ。これ以上の事は流石に協力者からは得られなかった。国を乗っ取った連中の悪事を徹底的に暴くためにこいつの情報も必要だな。」
「・・・つまり具体的に何をすればよいのです?」
そのダイゴロウの言葉で話がずれていることに気づいたジャンヌは、そうだったな、とだけ言ってもう一度全員に地図を見るように促した。
「・・・いいか。この襲撃作戦はあくまでゴールではない。あくまで国を奪還し、皇子を新たな魔王として即位させる為の作戦の第一段階だ。その事は皆頭の片隅に置いておいてほしい。・・・で、だ。何をするかと言うと、ざっくり言って2つだ。第一にこれ以上の犠牲が生まれることがないように設備を片っ端から破壊し尽くすこと、第二にさっき言った『半生命体』の発生源を突き止めて対処し、これ以上の敵の戦力の増強を食い止める。・・・そうだ、あとは犠牲が生まれたということを証明できる確固たる証拠を探して持ってきてくれ。そいつを大々的にばら撒けば連中の人心も離れるだろう。何か質問は?」
ジャンヌの問いかけに答えて手を挙げたのはジーナだった。
『施設に囚われタ子供ハどうすル?「雫」がこの国全域に広まテるならめちャくちゃ沢山いるはずだよな?』
「そうだ。多くの子供が捉えられているはずだ。ただカレキの森は危険な魔物がうじゃうじゃいる。だから無力化させてしまったらあの中に留めておいたほうが安全なはずだ。」
ジーナは納得したらしく、うんうんとうなずいた。
他に質問は?ジャンヌがそう聞くと、
「もし襲撃すれば敵側の陣営にすぐそれが伝わるはず。そうすれば警戒されて本命の魔王城襲撃が困難になるのでは?」
ダイゴロウが口を開いた。
「それに関しては何の心配もない。調査によれば定期連絡は12日に一度、監査官がパンデモニウムから送られてきて、施設全体を視察する時に行われるそうだ。あまりに手薄な警備だが、狙い目はそこだ。襲撃は監査官が視察を終え、カレキの森を出た直後に行う。そしてまた襲撃から12日後に来る監査官をシメて・・・いや、この話は襲撃作戦が片付いてからにするか。理解したか?ダイ」
ダイゴロウは異論はありませぬと言った。
「・・・よし。最後に視察が来たのは9日前だ。残り3日で準備をしなければならない。武器の整備をしっかりとしておけ。必要ならここの奥の武器庫のものから見繕っても構わん。以上だ。あ、あとは見取り図の写しを渡しておく。ジーナには死神語で書かれた物を用意してある。各人しっかり目を通しておけよ。」
ジャンヌは最後に質問は有るか?と聞き、なにもないであろうことを見るとさっさと作戦室を後にしてしまった。
この小説が少しでも面白かったら、評価していただけると幸いです。作者は泣いて喜びます。




