幕間1 『エレン=ヴァレフォル』
ボクはエレン。魔界帝国の名家、ヴァレフォル家の三男だ。
今日は魔界帝国の建国1000年を祝う日なのに、父上は別の町で、フリッツ兄ちゃんはここパンデモニウムでお仕事、ウィレム兄ちゃんはギシキに出席してて、ボクは今日一日留守番だった。
今日は家族はボク以外誰もいなかった。それでも寂しくなんか無い。
父上は帰ってこれないだろうけど、ウィレム兄ちゃんとフリッツ兄ちゃんは帰ってくるはずだ。だからおやしきでご飯を作ってくれる人に手伝ってもらってごちそうを作った。最近兄ちゃんたちはなんだかギクシャクしてる。
フリッツ兄ちゃんはボクの知っている中で一番強くてかっこいい。だからマオウ様のすぐそばではたらいてる。でも最近は全然話してないなぁ。たまーに家に帰ってくるとすぐに疲れて寝ちゃうし。兄ちゃんも兄ちゃんで大変なんだなぁきっと。
今朝もウィレム兄ちゃんと話したけど・・・なんだかいっつも辛そうで悲しそうで、見ていてなんだか不安になってくる。
だから夜は皆でお話しして、オフロに入って、兄弟らしいことをいっぱいするんだ。
そうだ、ジーナ姉ちゃんも誘いたいなぁ。よく喋るし、よく笑うし、話してて楽しいって感じるから。ウィレム兄ちゃんもあの人といるとなんだか楽しそうだし。
あっ!誰かが帰ってきた。足音でわかる!フリッツ兄ちゃんだ!
そう思ってボクは玄関に駆け出した。そこには果たしてフリッツ兄ちゃんが立っていた。
兄ちゃんは相変わらず無表情で、いつもよりもなんだか怖い感じがする。
おかえり!と元気よく言ってみても、表情は変わらない。何か嫌なことがあったに違いない。こういう時はあまり話しかけずにそっとしておくのが一番だ、これまでの経験からそう学んでいたボクは、
「じゃあボクはお部屋にいるから・・・」
とだけいって階段を登って部屋に戻った。
ボクは悲しかった。兄ちゃんたちとやりたかったことが出来なさそうだ。どうしていつも兄ちゃんが集まりそうなときに限ってこうなるんだろう・・・悲しくてさびしくて涙が出てくる。
足音が廊下から聞こえてくる。その足音は。ボクの部屋の前で止まった。兄ちゃんだ。
「うわっ!」
ドアに近づいてノブに手をかけようとすると、鍵穴から突然赤い刃が飛び出してきて、尻もちを付いてしまう。
赤い刃は光っていて、ジュー・・・・・・と音を立てて鍵の穴をどろどろに溶かしてしまった。ドアが開かない。
「兄ちゃん!なんで!?どうしたの!?なんで閉じ込めるの!?出してよ!兄ちゃん!」
叫んでも兄ちゃんからは何も返ってこない。兄ちゃん・・・どうして?
「兄ちゃーーーーん!!!!!!」
ボクの叫び声はやしきの誰にも届かなかった。




