魔界事変20-エピローグ 『魔界革命』
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魔界革命
日付:魔界歴1000年 元日 10時15分~15時00分
場所:闇の世界、魔界帝国、帝都パンデモニウム、魔王城
概要:魔界帝国はこの革命以前、全国で麻薬が流行し、貧富の差が拡大する一方で、また帝都パンデモニウムを除いたほぼすべての都市全域で同時多発的に反乱が発生した。
この情勢の悪化は魔王による独裁政治によるものであるとして、元魔王、サタン19世の元側近にして、現「魔界共愛国」の初代大統領、オールスを始めとしたかねてより魔王による統治に異を唱えてきた貴族たちを含めた共愛勇士達による革命である。
この革命の結果、サタン19世は退位し、元魔王第二子、サザはオールスの養子に迎えられたが、元魔王第一子、マルティスは配下の2人と共に抵抗を試みたが、悪が正義に勝てるはずもなく、あっさりと逮捕され処刑される予定であったが、オールスの海よりも深い慈悲により、三人は帝都パンデモニウムからさらに南側に位置する反魔王派で知られるアンドロマリウス家の所有する無人島、「ケズ=パンデモニウム」へ遠島となる運びとなった。
今後、共愛国新政府は貧民の救済、人民の平等化を推し進めていくと宣言し・・・
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・・・これいかに。
街中にばらまかれたビラを見てそう呟いたのは、ウィレムやジーナと同い年ほどに見える少年だった。
長い長髪を後ろでしばり、革の上着に袴姿、そして刀と呼ばれる剣を腰に差し、背中には籠を背負い、頭に被った円錐形の傘からは、二本の赤い角がのぞいている。
「何か妙と思えば、これ故か。」
少年は酒場で門前払いを食らって苛立っているようだ。拾ったビラをクシャクシャに潰した。
『でも、変じゃない?』
長い髪で顔の大半を隠した少女が籠から顔を出した。
「何が変なのだ?」
少年の切れ長の眼が後ろを見つめる。
『子供のくせに酒場に入ろうとして追い出されて逆ギレしてる所かなぁ、と思ったけどまぁそれは良いとして・・・
「全く・・・ワシらの村だけかと思っていたが・・・このネクロポリスとかいう街も同じだったか・・・で、何が変なのだ?」
少年は少女から受けた無意識という毒によるダメージを隠しきれずに言い訳になっていないことを言って、少女の真意を尋ねる。
『反乱が首都以外の都市で、しかも全く同じタイミングで起きるのはどう考えても不自然じゃない?それに、マルティス皇子の付き人と言えば子供のくせに稀代の逸材だって話よ?だからあっさりとやられるってのは不自然すぎると思う。』
「・・・ふーむ、なるほど・・・」
少年は少女の的確な指摘に思わず唸ってしまう。
「・・・よし、シェラ。ここから半径25里、いや13里をお主の千里眼で探ってくれ。」
『ええー!?あれ疲れるからあんまりやりたくないなぁ・・・ま、いいか。』
シェラと呼ばれた少女はしぶしぶと髪をかき分けて大きな一ツ目を見開き、周囲を探り始めた。
『・・・見つけた!ここから西に40キロ先、人が二人いる!』
シェラは叫んだ。
この広範囲を一瞬で探知したのだ。その術の精度は年を経るごとにどんどん上がっていっているようだ。
「どんな様子だ?」
『1人は女、もう1人は男で私達と同じ子供!女のほうは致命傷で這いながら移動してる!男は・・・なにこれ?外傷が一切ないのに全く動かない!寝ているわけでもないみたい!』
「・・・よし。もういいぞ。」
はあっ・・はあっ・・
シェラは肩で息をしながら一ツ目を隠した。
「あっぱれだシェラ。しばらく休んでいてくれ。」
少年はシェラの頭を軽く叩いてねぎらった。
『ダイゴロウは・・・どうするの?』
ダイゴロウと呼ばれた少年は答える。
「まぁ、次に目が覚めるときには分かるだろう。おやすみ、シェラ。」
「全くパンデモニウムに滞在していなかったのは奇跡だな・・・」
シェラが籠に潜り込み、寝息を立て始めたのを聞き届けると、ダイゴロウは足に力を集中させ、全力で西へ西へと駆け出した。




