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魔界事変18 『魔界事変9』

『うああああああああ!!!!』


 悲鳴ともに皇子とジーナは地面に叩きつけられ、体は何度も何度も水切りの石のごとく跳ねた。意識のない皇子をかばうのに必至で受け身を取れず、5,6回ほどでようやく落下の衝撃が弱まったらしく、これ以上弾まずに砂煙を上げながらヤスリのように背中を服ごと削られるような痛みにうめき声を上げた。


『・・・ッ皇子はッ!?』


 ジーナは痛みから我に返り、皇子の様子を見た。


 未だに意識は無いが、なんとか外傷は避けられたらしい。


 少女は死神族の体に心から感謝した。死神族の体は非常に頑丈なことで知られており、現に思い切り空から地面に叩きつけられても肋骨と肩だけで済んでいる。しかし種族の象徴である、命の次に大切な鎌はどこかに落としてしまったようだ。


 もしもあたしが囮にならずにウィレムが大砲で逃げていたら・・・恐らくあいつはグシャグシャになっていたに違いない。


ジーナは思った。


『よかった・・・なんとか風雨を凌げる場所を探さないと・・・』


 ジーナは空を見上げた。運悪く空は曇り、遠くから雷鳴も聞こえる。


 休んでる場合じゃない、とジーナは立ち上がろうとするが、どういうわけか脚に力が入らない。


 恐る恐る腰から下を見てみると、恐らく大砲の爆風のせいだろう、履いていたズボンも膝から下は焼けて無くなっているし、脚も見るに耐えないほどの火傷を負っていた。


 先程まではなぜか痛みを感じなかったが、焦げた足から、折れた骨から今になって激しい痛みが痛覚を刺激してくる。


 ジーナは歯を食いしばって傷ついた体に鞭打ちながらその場から這うように動き始めた。


 この絶望的な状況を少しでもマシなものにするために、なんとか生存確率を0.1%でも高めるため、そして何よりも皇子だけは生かしたい、という想いからー


 少女は歩き始めたのだ。


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