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魔界事変17 『魔界事変8』

「ゴキブリ並みにしぶといお前もこれは耐えられるかな」「じっくり苦しめてあの世へ送ってやる」とこちらに罵詈雑言を吐き散らしてくる。


 扉が開き、先程の小人がなにかの容器を担いで入ってきた。その体格では相当つらいのだろう、足取りは重くプルプルと震えている。


ーったく、ウスノロめー


 男は小人から容器を奪い取り、腹立ち紛れにか小人を思い切り蹴り飛ばした。先程の小人は悲鳴を上げる間もなく床に叩きつけられ、気を失ったようで、男は舌打ちをしてそれにつばを吐き捨てた。仲間意識は皆無のようだ。


 男は容器にかけられた何重もの鍵を一つ一つ取り外していき、中から手のひら程の大きさの小瓶を取り出した。中身は黒に紫や赤が混じった粘性のある液体のようで、多少瓶が揺れたくらいでは動かない。


 小瓶が外気に触れた途端、文字通り空気の匂いが変わった。本能がこの瓶に近づくな、と命じてくるようで、ひどい悪寒がする。


それは男も例外では無いようで、小瓶の中身を見ると顔をしかめたのがわかる。


 小瓶を一旦大切そうに机に置きながら、今度は何やら針のついた管のようなものを弄っている。


 なんだこれは・・・一体何を・・・


 先程までの男の狂暴な様子が突然鳴りを潜めたことと、小瓶への強烈な恐怖心から、ウィレムは男に尋ねようとした。


 しかし、その言葉は発せられることはなかった。


 管のついた針がウィレムの左肘の皮膚を貫いたのだ。針には返しが付いているらしく、痛みで身を捩らせても針は抜けない。


 管の先を注意深く見ると、その管は先程の小瓶と繋がっていた。


ー・・・こいつはなァ、『救済の雫』の原液でよォー


 男が沈黙を破った。


ー薄めたやつは街中に溢れてるが・・・原液を人体に直接投与するとどうなるか、興味ねぇか?ー


・・・そうか、『救済の雫』はこいつらが一枚噛んでやがったか。


 とある場所で売りに出されてから瞬く間に国の全域を汚染した薬物、『救済の雫』。人を腑抜けにする物は薄められていたものらしい。ウィレムの見た雫はあんな色はしていない。薄い水色だった。


ーどうせなら薄めたやつで廃人にして死ぬまで玩具にして飼ってやりたかったが・・・ー


 男の顔には血管が浮かんでいる。


ーそんな楽な道は選ばせねェ!ー


 男は叫び、瓶を逆さにして液体を管に流した。

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