魔界事変11 『魔界事変2』
畜生…嫌〜な予感はしてたんだよなぁ!ウィレムは心の中で叫んだ。
王子は…あの謎の光に当てられてから意識がない。呪いの類だろうか?ジーナもかなり精神的にダメージを負っている。畜生、追手を倒しながら逃げねぇといずれ捕まっちまうってのにあの様子じゃ…
ウィレムの焦りは強まる。
「ジーナ!王子を担いで運べ!」
ウィレムは王子をジーナの方に投げ渡した。受け止められた王子は相変わらず意識がない。
廊下を駆け抜けていると、目の前に突然さっきのと同じような黒ずくめの連中が現れた。
「さて・・・やるか!!」
ウィレムは精神を集中させ、激しいスパークと共に手のひらから電気エネルギーの刃を出現させる。
振るわれた光芒は刃の如く、相対する敵をことごとく斬り伏せた。
『マテリアライザー(物質化)』…
カタチ無き物をカタチ有る物に。
これがウィレムの一族の固有能力だ。
軽業師のような動きで伸縮する刃を振り回し、四方八方から迫りくる敵を何度も何度も切り捨て続けるが、その刃はジーナや皇子には掠りもしない。
城の中を上へ下へ、右へ左へ、いくら進めども出口が見つからない。しかも追手は休みなく、突拍子もなく現れてくる。一匹一匹は強くないが、常に王子とジーナを庇いながら戦っていると、流石に体力が持たない。何とか出口を…
考えろ…考えろ…!
『おい!思い出したぞ!』ジーナが叫んだ。
【固有能力】
広義の魔法の一つだが、通常の魔法とは二つの点で一線を画している。
一つは魔界の72氏族それぞれが独自性を持って継承するものであることと、二つにその魔法としての特異性である。
本来魔法の発動、行使にはその魔法に対応する術式を脳内で唱えるにしろ口頭で語るにしろ、文字に書き起こすにしろ、その術式を『強く意識』する必要がある。
通常の術式は難度の低いものはおよそ12文字、高難度のもので3百文字を超えるが、ウィレムのマテリアライザーのような固有能力の術式は少なくとも5万字を超える。しかし、固有能力を持って生まれてきた者は本能的にその固有能力を極めて簡単に発動させる「裏技」を使うことができる。そのため、予備動作を最小限にして強力な技を使用できるのだ。




