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畏怖  作者: 瀬戸宇治 峻
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ミタ。

——君の通夜が始まる。


人の目とはこんなにも怖い物なのか。

興味をそそる目、獲物を見る目、

犯罪者を見る目、ゴミを見るような目、

怖がられる目。


言葉は無くとも、こんなにも突き刺さる。

小さな頃から見られていた。

見つめられ、監視される目。

目、目、目。


慣れてる筈なのに心が痛くなる。

俺が何をしたのか?

俺は罪を犯したのか。



誰も言葉にはしない、けれども目が語る。

社交辞令を交わし、ふざけた人類がここにある。


静かに過ごしてると、

——君のお母さんが隣に来た


「気にしてる?皆んなの目が」


「慣れてますよ、こんなの。

いつもの事です」


「そう。」


優しい笑み。

優しい口調。


「——君....息子を見てくれる?」


誰もが気になる、噂を

この目で見てくれとせがむ母親。

この人は最後の姿を俺に託すのか。

自分も見てない素振りして、俺に見せるのか。



はい....と静かに案内される。

周りは好奇な目で俺を見つめる。

棺桶のその向こうに何があるのか。

はたまた無いのか。



「おじいちゃん、——君なら見ていいでしょ?

ね?いいでしょ?」


——君のおじいちゃんは記憶よりも年老いてはいるが、変わらない。

暫く悩むおじいちゃんは、

俺の顔を見て、

ハッとした顔をして頷く。


お経を唱えてたお坊さんや、

周りの人達が無言になる。


「どうか見てやって。最後の姿」


涙を堪えながら伝わる悲しみ。


俺は最後の姿を見るために仏壇を背に、

皆んなの顔を前に。

棺桶を開ける。


皆んなに見えない様に、蓋で皆んなから覆い隠す様に開けられる。


そこにあるのは袋。

白い紙で覆われた袋。


顔を紙で覆い隠した人達が丁寧に袋を開けてく。

白い紙の袋は恐らく頭の方が赤黒く固まっている。


静かに紙を剥がす音と、

俺の唾を飲む音だけがここを支配していく。


最後の紙が取れた時。

俺は、目を見開いた。


——君の頭、頭?だった所は

ミンチにされたのか、はたまた混ぜ合わせたのか、輪郭だけが何とか残っている状況で、

そこから生える様に、小さな子供の身体が出てきている。

要するに、——君と小さな子供の頭が混ざっておりミンチ状態で、2人の顔が分からず。

どちらの目玉かも分からず。

2人の遺体がそこにあったのだ。


吐き気が、来るかと思ったら俺の体は震え。


泣きながら笑い声を上げていた。


周りの様子も変わり、慌てふためいてる様子。

俺はコレを見たのだ、

コレを。

人だった何かを。

——君のお母さんは、

悲鳴、イヤ。

子供の様に大声で泣き出し、

周りも騒ぎ始める。


力の弱まった体を何とか引きずり、

ソレから逃げようとする。

まるで地獄絵図だ。


悲鳴と泣き声と笑い声の共鳴。


俺は笑いながら逃げようとすると、前に立ってる人物を見る。


そこには——君のおじいちゃんが居た、

見たことも無い無表情な顔で俺を見下ろす。

少し動きを止めると、顎で指示を出す—-君のおじいちゃん。


すると、3人の男達が俺を束縛する。

力が強すぎる大人の、ましてや漁師の力に勝てず。

でたらめに逃げようと体を唸らせる。


—のぶ君のおじいちゃんは

何か唄を唄いながら

仏壇の下から木箱を取り出し、俺の前に置く。

古い木箱は歴史を感じる程にボロボロとなってる。

—のぶ君のおじいちゃんは箱を開けようとした時に、俺の体や頭が引きちぎられる様な感じで痛み出す。


笑い声から子供の様に泣きじゃくり、

嗚咽しだす。


その箱は開けてはならない。

開けたら、


俺は居なくなる。





「ねぇ、-げのぶ君、なんであそこは入っちゃダメなの?」


「-ますじいさんがいるからだよ」


「なにそれ」


「おれもじいちゃんから聞いた怖い話し!」


「なにそれ!!面白そう!!」


『怒らせちゃダメだよ!!

—ますじいさんが来る!』


「ねぇ?どんなふうに??」


「えらばれるの。」


「その—ますじいさんに??」


「絶対ダメ!!名前も言っちゃ本当はダメなんだよ!!

いつも見てるから!!

気に入られると連れてかれる!!!」


「へぇ、じゃオレらが気に入られるといいね!」


「なんで?」


「ずっと友達でいれんじゃん!」


「......死んでも?」


「うん!!」


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