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原初の錬金術師 ~最強の魔術師は斯くして現代魔法を蹂躙する~  作者: 結城 からく


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第8話 錬金術師は出発する

 翌日の朝、私は研究所を発つことになった。

 昨晩のうちに所長が王に連絡し、面会できるように手配したのである。

 何やら一悶着あったそうだが、無事に決まったらしい。

 別に私は深夜の来訪でも構わなかったものの、所長の説得で朝までずれ込むことになった。


 彼は彼で苦労している。

 板挟みの立場なので、考えることが多いようだ。

 少しばかりは同情した方がいいだろう。


 私は先導する所長に従って廊下を歩く。

 服装は黒を基調としたスーツで、金色の刺繍が施された高級品だ。

 軍服を改竄して作成したものであった。

 現代の価値観に沿ってデザインしたのだ。

 国王に会うのだから、これくらいの準備は必要だろう。


 ネクタイを締めながら廊下を進んでいると、所長が発言する。


「ルドルフ様、一つお願いがあるのですが……」


「何かね。言ってみたまえ」


 私が許可すると、所長は逡巡した。

 言いにくいことらしい。

 少し悩んだ末に所長は懇願する。


「我々は争いを望んでいません。ですので、くれぐれも暴力に訴えるようなことは控えてくださると幸いです」


「ふむ、善処しよう」


「か、感謝いたします……」


 所長は深々と頭を下げた。

 大きく安堵している。

 私が腹を立てて危害を加えるとでも思ったのだろうか。


 そうだとしたら失礼な話である。

 私はそこまで野蛮ではない。

 自らの思考に従って、理性的に行動している。

 意味も無く生物を虐めるほど、酷い性格ではなかった。


 やがて私達は研究所の出入り口に到着する。

 遠巻きに兵士達がこちらを眺めていた。

 近付いてくる者はいない。

 所長が泣きそうな顔で彼らに視線を送るも、あえなく無視されている。


 研究所を出るとそこは、乾いた大地だった。

 遠くを高い鉄柵が覆っている。

 厳密にはそこまでが研究所の敷地らしい。


 この施設は、荒野のど真ん中にあった。

 問題が起きた場合、二次被害を抑えられるように考慮されているそうだ。

 ここから国王のいる城まで移動する予定だった。


 私はそこで目の前の物体に注目する。

 それは四つの車輪が付いた金属の箱だ。

 人間が数人は入れそうな大きさで、部分的にガラスがはめ込まれており、椅子も設置されていた。

 箱の前部らしき椅子には、既に男が座って待機している。


 私は金属の箱を指差しながら所長に尋ねる。


「ほほう、これは何かね」


「自動車です。液状化した魔力を燃料にする……現代の馬車です」


「なるほど。話に聞いていた車両とやらか」


 私は納得して頷く。

 内部に座っている男は御者――つまり運転手だろう。

 平静を装っているが、凝視する私を意識していた。

 かなり緊張している様子だった。


 観察を終えた私は、顔を上げて所長に声をかける。


「さて、グリゴラー君」


「グレゴリーです」


「どうでもいい。それより君が車を運転してくれるかな。王のもとまで案内してくれたまえ」


 私の要請を受けた所長は、瞬時に絶望する。

 ようやく解放されると思っていたのだろう。

 残念ながらそのつもりはなかった。


 眉を下げた所長は、遠慮がちに反論する。


「係の者がおりますが……」


「関係ない。私は君を任命したのだよ。分かるかね?」


 私は所長の方に手を置くと、顔を近付けて彼の双眸を凝視する。

 所長は目を見開いて硬直した。

 その顔を脂汗が伝っていく。

 途端に青くなった所長は、それでもなんとか回答を口にした。


「しょ、承知しました」


「よろしい。一緒にドライブを楽しもうじゃないか」


 私は手を離して微笑する。

 車内を覗き込むと、運転手と目が合った。

 優雅にウインクを返せば、車外に飛び出した運転手は転がるように逃げ去った。

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