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第64話 錬金術師は戦争を喜ぶ

「教皇が権能を……」


 所長が深刻な面持ちで考え込む。


 権能とは。神々の保有する特殊なパワーの総称である。

 基本的に万能で、多種多様な奇跡を発現できる。

 人間からの信仰心が高まるほどに強化される上、神の位にも直結していた。

 彼らは権能を重視するのはそのためだ。


 端末の爆発は、現代技術と権能の融合だろう。

 映像に権能が仕込まれていたのだ。

 私が視聴した場合に限定して、爆発するように細工したに違いない。

 ただの魔術では不可能に近い設定だが、権能ならば容易だった。


 しかし、ここまで精密な動作ができるのは少し珍しい。

 権能の質も相応に高い。

 神格が関わっているのは確信していたが、さらに高位であるのも明らかとなった。


 映像越しだがやり取りをしたことで分かったことがある。

 教皇こそが、一連の首謀者だ。

 彼が守護神をけしかけて、使徒やレイモンドといった視覚を送り込んできた張本人だった。

 教皇の裏に誰かいる線も考えていたものの、そうではなかったようだ。


 彼は紛うことなき人間であったが、神に値する権能を保有している。

 ただ譲渡されたのではない。

 あれは教皇が譲渡する側だろう。


 人間が神の力をそのまま宿していることはあまりない。

 特殊な状態だがありえない話ではなかった。

 とても珍しい事例として、それを成立させるパターンをいくつか知っている。

 教皇はいずれかに該当するのだろう。


(まあ、細かいことはどうでもい)


 大切なのは、教皇との陣取り合戦が始まったことだ。

 ただそれだけであった。

 事情なんて関係ない。

 敵が定まったのなら、やることは一つだけである。


 私はバルコニーを修復させながら所長に質問をする。


「このメッセージを女王は知っているのかね」


「はい、既に兵士が報告しています。複製した映像も観ているでしょう」


「そうか。ならば会議をしなければいけないな」


 相手は神だ。

 ただの戦争ではない。

 それなりの準備が必要であった。

 制限なしの戦いを提案したくらいだから、きっと凶悪な策を有しているはずだ。

 今のうちに作戦を決めておくべきである。


「いやはや、楽しい展開になってきたな。そう思わないかね」


「私は平和な方がいいのですが……」


「戦争は出世のチャンスだよ。君にぴったりだと思うが」


 所長と会話をしていると、上空に奇妙な反応が生じた。

 バルコニーに出た私は視線を向ける。

 雲を切り裂いて降臨するのは、数百もの使徒の軍団だった。

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