表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
原初の錬金術師 ~最強の魔術師は斯くして現代魔法を蹂躙する~  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/85

第42話 錬金術師は加護持ちと対峙する

 数十万枚のガラスが同時に割れるような音と共に、辺りを覆い尽くす闇が粉々に散った。

 残されたのは、崩落寸前のトンネルだけだ。

 あれだけ遠かった出口がすぐそこにある。


 渾身の一撃を放った所長は、その場にへたり込む。

 彼の握る剣が砕けて霧散した。

 強引に物質化していたので、反動で自壊したようだ。


(無事に突破できたようだな)


 所長が振った剣は、加護のエネルギーで構成されていた。

 私が手を加えて物質化したが、内包された特性は失われていなかった。

 すなわち因果律の改竄だ。


 剣が振り抜かれたその瞬間、空間の歪みを"斬る"という過程を飛ばして"斬った"という結果に到達した。

 それによって空間魔術は破壊されて、トンネルの距離感は正常なものに戻ったのである。

 私を一方的に攻撃してくれた意趣返しというわけだ。


 嬉々として車外に出た私は、呆然とする所長の肩を叩く。


「ご苦労。やればできるじゃないか」


「あ、ああ、ははは……」


「車内で休むといい。あとは私に任せたまえ」


 私は所長を労うと、急停車した先行車両の横を抜けて、半壊したトンネル出口へと赴く。

 そこには多数の兵士が待ち構えていた。

 異常を察して駆け付けたのだろう。


 もっとも、大半の者達はどうでもいい。

 私が注目したのは、最前列にいる一人の男だ。

 白いフードを目深に被る彼は、大型のライフルを携えている。


 鋭い眼差しは、私を冷静に観察していた。

 微塵の油断も見られず、いつでも発砲できる体勢だ。

 そして男は、体内に加護の力を秘めていた。

 遠距離から私を破壊してきたのは彼で間違いない。


「やあ、素晴らしい出迎えに感謝するよ。十分に楽しませてもらった」


「…………」


 朗らかに挨拶するも、反応は返ってこない。

 他の兵士達は銃を構えたまま、撃つべきか決めかねているようだ。

 或いは加護持ちの男が指揮権を持っているのかもしれない。


 私は気にせず話を続ける。


「因果律の改竄とは、良い加護を貰ったじゃないか。参考までに訊きたいのだが、どこの神から受け取ったのだね?」


「舐めるな! 貴様のような邪神に教えるわけがないだろうッ!」


「――ほう」


 加護持ちの感情的な反論に私は笑みを深める。

 そして彼の言葉を訂正する。


「誤解しているようだが、私は邪神ではない。邪神の知り合いは何柱かいるがね」


 神格の類と間違えられることは珍しくない。

 しかし失礼な話には違いなかった。

 あのような輩と同列に見られたくない。


 嘆息した私は質問を重ねる。


「まったく、そのような情報を誰に吹き込まれたのだね」


「言うわけがないだろう。貴様はここで始末する」


「大それた宣言だが、勝機はあるのかな」


「ある」


 加護持ちが淀みなく断言する。

 ライフルの銃口が持ち上がり、静かに私の頭部を狙った。

 フードの奥の眼光が、より一層の強さを見せる。


「貴様が死ぬまで撃ち殺す。再生能力の限界に達すれば、どのような生物であろうと息絶える。それがたとえ、神であっても」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 再生能力ねぇ‥‥因果の弄れば能力の限界もクソも無い気がするんだか。それに耐性は別に祝福や特別な能力が無くても獲得出来るし‥‥コロナウィルスでも。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ