第4話 錬金術師は現代文化に感嘆する
その後も私は、兵士を殺戮しながら施設内を闊歩した。
既に数十人は殺傷しているが、決して犠牲者を増やしたいわけではない。
彼らが無謀な突貫を繰り返すのだ。
銃による射撃や、さらには手榴弾と呼ばれる爆発物の投擲まで実行してくる。
もっとも、いずれも私を傷付けることはなかった。
貰った分を返して終わりだ。
兵士を始末していると、たまに魔術師が登場した。
彼らは遠距離から術で攻撃してくるのだが、出力が驚くほどに低かった。
最初は牽制や脅し目的かと思った。
しかし、どうやら彼らは本気で魔術を行使しているらしい。
人間の魔力量は、休眠前と比べて想像以上に減少しているようだった。
加えて詠唱の体系が廃れてしまったのだろう。
年月の経過と共に風化したに違いない。
代わりに銃等の新たな武器が主流にとなっていた。
実に面白い進歩であった。
そうして現代の文化に触れながら殺し回っているうちに、私は一つの発見をする。
兵士達は、誰もが耳に何かを装着していた。
死体を確かめるとそれは、金属製の装飾品であった。
それだけなら気を留めないが、内部に術式が刻まれて魔力が循環している。
何らかの効果を発揮しているようだった。
「ほう」
これだけ小型の魔術具は見たことがない。
現代の技術で作ったのだろう。
興味を抱いた私は、死体から装飾品を外して精査する。
結果、それが念話に近い効果を有することが判明した。
これを着けている者同士での遠隔会話を成立させているのだ。
ますます気になった私は、装飾品から発せられる魔力を辿る。
無数の繋がりを探っていると、命令系統が明らかとなった。
装飾品にもいくつか種類があり、具体的には上位のものから一方的に言葉を飛ばせる仕組みのようだ。
仕組みを解き明かしていくうちに、ついに私は大元の発信源――すなわち最上位の装飾品の位置を特定した。
発信源を持つ者は、一つの部屋に閉じこもっていた。
おそらく責任者だろうか。
自身は前進に出ず、安全地帯から命令に徹しているらしい。
挨拶をしに行かなければ。
互いの今後について話し合いたかった。