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第27話 錬金術師は神を罰する

 私の一言に、守護神が怒りを覚えた。

 黄金剣を動かそうとする。

 指に力が込められた瞬間、私はオリハルコンの粒を十発ほど射出した。

 七色の弾丸を受けて黄金剣は砕け散る。


「なっ……!?」


 守護神は驚愕する。

 まさか黄金剣を破壊されるとは思わなかったのだろう。

 きっと主力武器だったに違いない。


 動揺する彼女であったが、すぐに背中から光の翼を生やした。

 それを上下に羽ばたかせて加速を得ると、一直線に私へと突進してくる。


「面白味がない。不合格だ」


 私は指を鳴らす。

 浮遊するオリハルコンの粒が、全方位から守護神へ殺到した。

 光速に迫る速度の流体金属が縦横無尽に踊り狂う。

 余波が城の尖塔を粉砕し、七色の輝きが乱反射する。


 その中央では、守護神が肉塊となっていた。

 為す術もなく引き裂かれていたのだ。

 翼もとっくに消滅している。


「ふむ」


 私は粒の嵐を止めて屋根に戻す。

 損壊した箇所も修繕しておいた。


 宙に浮かぶ肉塊は痙攣していた。

 水音を立てて蠢き、徐々に人型へ戻ろうとしている。

 皮膚が広がって表面を覆い始めていた。


(大した再生能力だ)


 神殺しの力を受けて回復できるとは、よほど治癒に特化しているのだろう。

 それに女王の再生と酷似している。

 おそらくは、加護を与えた張本人ではないか。

 守護神を名乗ったので、関係性としては不自然ではない。

 そうして信仰心を集めて、力を蓄えているのかもしれない。


(浅ましいな)


 守護神とは聞こえが良いが、寄生虫に等しい存在だ。

 信者がいなければ何もできない。

 神々の力は、人類に依存し過ぎていた。

 傲慢に見下しながらも、信仰心の増大に注力している。

 その姿はどうにも愚かしかった。


 私は守護神の再生が終わるのを待つ。

 あの速度なら大して時間はかからないだろう。

 追撃してもいいのだが、少しだけ遊ぶことにしたのだ。

 このまま終わらせてはあまりにもつまらない。

 せめて茶番と呼べるだけのやり取りにしたかった。


 やがて守護神が完治する。

 呼吸が荒くなった彼女は、悔しげに私を睨む。

 まだ何もできていないことについて、果たしてどう考えているのか。


 空中で静止する守護神は、再び黄金剣と翼を出現させた。

 守護神は半身となって刺突の体勢を取る。

 得意の再生力に任せて突進を敢行するつもりらしい。

 ぎらついた眼差しは、刺し違えてでも殺そうという意志が窺えた。

 神格の矜持を以て、私を始末したいようだ。


「――つまらんな。それだけかね」


 ほんの僅かに残っていた期待は完全に霧散した。

 どうやら時間の無駄だったらしい。

 これ以上は何も出てこないようだった。

 大いに失望した私は、左右の手のひらを打ち合わせる。


 同時に守護神が肩を寄せて驚いた。

 手足を振り回すも、彼女はその場から動けない。

 まるで見えない力に挟まれているかのようであった。


「これが罰だ。後悔しながら味わいたまえ」


 私は悪意を湛えた笑みで言う。

 そして、合わせた手のひらを捻りながら回転させていく。


 骨が軋んで折れる音がした。

 肉と皮膚が裂けて鮮血が弾ける。

 呻く守護神は、紙のような厚さまで押し潰された。

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[良い点] >守護神とは聞こえが良いが、寄生虫に等しい存在だ。 >信者がいなければ何もできない。 >神々の力は、人類に依存し過ぎていた。 >傲慢に見下しながらも、信仰心の増大に注力している。 >その姿…
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