表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/85

第12話 錬金術師は英雄を望む

 私達を乗せた車は荒野を進む。

 先ほどまでの攻撃が嘘のように何も起きない。

 実に平穏な道のりであった。


 そのような状況に私は不満を洩らす。


「退屈だな。もうミサイルは来ないのか。軍隊でもいいのだが」


 一連の対応を鑑みて、この国がそれなりの軍事力を保有することは知っている。

 まだまだ追加戦力を差し向けることができるはずなのだ。

 貴重な兵士を消耗したくないのなら、ミサイルを飛ばしてくればいい。

 躍起になって雨のように降らしてくれれば、こちらも少しは暇潰しになる。


 ところが私の希望とは裏腹に、荒野は静かだった。

 平和な青空がどこまでも広がっている。

 きっと今日はずっと快晴だろう。


 あまりにも退屈なので、私は車内で思案することにした。

 腕組みをして無言で考え込む。


 運転中の所長は挙動不審だ。

 急に黙った私が気になるらしい。

 彼を気遣う必要もないので、そのまま思考に耽っていく。


 私が脳裏で振り返るのは、現代における戦闘の数々であった。

 研究所内で始まり、直前の竜巻までを順に思い出す。

 その中で気になったことを言葉にして呟いた。


「現代兵器は誰でも手軽に力を得られる。しかしその弊害なのか、突出した強さを持つ個人がいなくなった気がするな。そう思わないかね?」


「その辺りは何とも……」


 所長は曖昧な返答をする。

 彼には答えられない内容だったようだ。


 休眠前の世界と比べると、人類は弱くなった面があった。

 魔力量が激減し、身体能力も低下している。

 それらを補うように技術が進歩しているものの、根本的な戦闘能力は大幅に下がっている印象だった。


 早く私の興味を惹くような人間と会いたい。

 探せばきっと見つかるはずだ。

 個人的には、これから向かう城に期待していた。

 国の中央部なのだから、優秀な人材も揃っているに違いない。

 見つけた暁には、どうにか接触を図りたかった。


 思考に没頭して退屈を紛らわせていると、遥か前方に変化が見えた。

 荒野が途切れたその先に、豊かな草原がある。

 そこに巨大な外壁が設けられていた。

 外壁の向こうには、城の尖塔らしきものも望める。


 私は所長に尋ねる。


「あれが目的地かね」


「はい。城下街から城へと繋がっております」


 遠目なので詳細はまだ分からない。

 しかしあの外壁から考えると、街はなかなかの規模だろう。

 やはり現代は大きく栄えている。

 どのような街並みが望めるか楽しみだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ