第10話 錬金術師は歓迎を喜ぶ
「あ、れは……ッ!?」
所長が叫んで、急ブレーキを踏む。
甲高い悲鳴を上げながら車両が停止した。
その間にもミサイルが接近する。
明らかに直撃する軌道だった。
私はそれを横目にしつつ、所長に指示を送る。
「運転を続けたまえ。私が処理しよう」
ミサイルに視線を向けると同時に術を行使した。
空中を飛ぶミサイルを数千の部品に分解し、瞬時に圧縮する。
膨らみかけた爆発エネルギーを、部品と混ぜて一点に集めていった。
それを上空に打ち上げて解放する。
刹那、切り裂くような閃光が地上に降り注いだ。
数瞬遅れて轟音が響き渡る。
所長は頭を下げて悲鳴を洩らした。
私は腕組みをしながら笑う。
「現代は本当に面白いな。様々な兵器が出てきて飽きないよ」
呟きながら運転席を小突く。
我に返った所長は、ようやく車両を発進させた。
幾分か速度を落としながら、道路に沿って走り始める。
所長は辺りを忙しなく見回していた。
顔面は蒼白を通り越して死人のようだった。
「これは、一体……」
「君は知らないだろうが、既に十三発のミサイルが飛んできたよ。国王は、よほど私を葬りたいらしい」
私は正確な情報を提供する。
所長はますます顔色が悪くなった。
「ま、まさか、そんな」
「残念ながら君は切り捨てられたのだよ。現実を認めたまえ」
話している間にも、追加で二発が飛来してきた。
私は適当に圧縮して打ち消す。
ミサイルはなかなかの威力だった。
研究所くらいなら数発で瓦礫の山に変えられるだろう。
人間が使える程度の防御魔術なら、簡単に突き破れるはずだ。
「さて、もう少し急いでくれるかな。時間は有限だ」
「これから、どこへ行くというのですか!」
「決まっているだろう。国王の城だよ」
私は平然と答える。
すると所長は、信じられないとでも言いたげに顔を歪めた。
寸前で飲み込んだが、文句を発しそうになっていた。
それを察しながらも、私は悠々と話を続ける。
「手厚い歓迎をしてくれたのだから、相応の礼を考えねばなるまい。君も案があれば、遠慮なく言ってくれたまえ」
「しょ、承知しました……」
私達を乗せた車は順調に進む。
散発的に飛んでくるミサイルを処理しながら距離を稼いでいった。
常人からすれば絶望的な状況だろうが、私からすれば何てことはない。
ちょっとした刺激は、退屈な移動時間を紛らわせてくれる。
実に素晴らしい配慮であった。
やがて遠くに街が見えてくる。
そこまでの道を遮るようにして、大勢の人間が立ち並んでいた。
揃いの武装を施した兵士達だ。
各種兵器も設置されている。
彼らは国の軍隊である。
一様にこちらを注視しており、銃を構えていた。
いつでも攻撃できる態勢なのは言うまでもない。
後部座席からそれを認めた私は、顎を撫でつつ微笑む。
「ほほう、壮観だな」
「ルドルフ様、どうしましょうか……?」
所長が本格的に焦っている。
今にも泣き出しそうな様子だった。
冷静さを欠いた所長に、私は顔を寄せた。
湧き上がる愉悦を堪えながら優しく命じる。
「決まっているだろう。直進だ。堂々ともてなしを受けようじゃないか」




