宿題、倍or半減?
かなり短い短編です。
「先生〜小学生が勉強っておかしくない?」
ブースの机の上でダラ〜と寝そべりながらフミヤ君が先生に愚痴を零した。
「何がだい?」
「だって、みんな砦騎士やdgoで遊んでんだよー、俺っちだけ机に向き合って白紙とお友達してんのよ?どう考えても理不尽っしょ!」
フミヤ君はそういうと足をバタ足のようにバタバタさせ始めた。
「そりゃ、フミヤ君が受験したいってからここに来てるわけでしょ?」
「別に僕がしたいわけじゃないですー、ママがしろって言ってんだからやってるだけですー」
そういうとイーッと表情を見せた。
先生はハァと肩から溜め息を吐き、パタンと教科書を閉じた。
「…それじゃちょっと面白い話をして上げようか、フミヤ君の集中力も尽きかけてるし」
その言葉を聞いてフミヤ君は目をキラキラと輝かせ始めた。
「マジで!やった!先生の雑談ちょーオモロイからここ来てんだよね〜!」
先生はゴホンと咳払いをして話始めた。
「これは先生の友人の話なんだけど、その友人は中学受験をしたんだ。丁度今の今のフミヤ君のように勉強をしてね。で友人はかなり地頭が良くてある程度難しい問題もパッパッ解けたんだって」
フミヤ君は眉を寄せて苦いものを噛んだような表情をした。
「もうオチが見えてるよ。どうせあれでしょ、あれ、そこから勉強を怠ったから受験に落ちた〜とかそんな感じっしょ」
そういうとペンをクルクル回し始めた。
「いや違うよ。ソイツは普通に受かったよ中高一貫の豊穣中に」
「豊穣って偏差値50後半のとこじゃん。ならますます俺に関係ねぇじゃんその天才の話」
「これからが面白くなるところ。でその友人には妹がいるんだ。」
「ふーん確かに僕にもいるね妹が」
ペンの回す勢いが激しいものから少し緩やかになった。
「それでどしたの?」
「で妹も受験をしたんだ。かなり最初は成績が下だったらしいよ。でも凄い勉強量を増やして頑張ったんだって」
滑らかだったフミヤ君のペン回しがどことなくぎこちなくなってきた。
「…へー、でその妹さんどこか受かったの?」
「まぁ、王道のオチだけど受かったよ」
「どこに?」
「桜陽女子に」
「へっ?」
フミヤ君はその言葉に耳を疑った。しかしそれも当然だった。
桜陽女子とは中高一貫の女子中学校の中でも偏差値がダントツで一番の高さを誇り、生徒の将来はキャリアの官僚、最先端の学問に励む学者、医者になることが決定された言われても過言ではない。
「そ、それは凄いっすね、先生」
「すごい頑張っていたんだね、妹さん」
「でもその話をしても全く見えてこないっすよ…」
フミヤ君のギュンギュンと回転していたペンの回転がいつのまにかカチコチカチコチとしたものになっていた。
「まぁここからがオチ、今まで『すごい、すごい』って持て囃されていた友人が全く相手されなくてなったのよ。逆に『なんで勉強しないんだお前は』や『妹ちゃんが桜陽に行ったのにお前は…』なんて言われたんだと。でそれ以来妹にコキ使われてるらしいね友人」
フミヤ君の手からコロコロとペンが落ちた。
「まぁ、みんながみんなそうというわけじゃないし、フミヤ君とユウマちゃんの中からはかなりいいから関係ないと追うけどね」
アハハハとどことなく下手な笑いをしながら言った。
「さてとあんまいいオチではないけどどうだい?あと20分頑張れそう?」
フミヤ君は少し見開き、唇をギュッとしながら答えた。
「…ハイ、やります」
「どうした?フミヤ君、片言な返事をして?」
「…別になんでもないです、はい」
「そう、ならやってね」
そういうと先生は教科書をペラっと開きそのページに目を落とした。
「あ、それと言い忘れてた。そこのぺージ15分以内で全問正解なら宿題半減にするけど、15以上じゃかったり一問でもミスると倍ね」
「鬼か!あんたは!」