賞金首
私的には面白くなる予定です(笑)
『ジジッ……第9地区で集団暴行が行われていると通報あり。近くに居るメンバーは鎮圧に向かって下さい……ジジッ』
ノイズ混じりの声が右耳に付けたイヤホンから聞こえてくる。
「第9地区、了解。僕が行ってくるよ」
ジッパーが沢山着いたパーカーを着て、同じくジッパーの着いたフードを被った少年は、そう言うとビルの屋上から周りを見渡す。
「また第9地区か。今回はどんな人がやられてるのかなっと」
そう言う声は楽しそうだった。
少年は額に押し上げていたゴーグルを掛けて、ビルとビルの間を跳びながら、現場へと駆けていく。
その跳躍力は人間離れしている。
標的を見付けた少年は、低めのビルから音を立てて飛び降りた。
その音に、標的達は暴行を止め、少年の方を見る。
「何だ?」
「何処から現れやがった?」
「お、新しい賞金首が自分からやってきやがった」
少年と青年の間の年齢と思われる男達は、ニヤけた顔でゆっくりと少年に近付こうとしている。
武器を持ったそんな男達に構わず、少年は奥に居る暴行を受けていたであろう人物の方を見やる。
ジッパーの沢山ついた着ぐるみを着ているようだ。
いたる場所から綿が飛び出している。
「どこ見てやがる!」
「バカにしてるのかてめぇ!」
「殺ってやる!」
少年が自分達を気にしていない様子だったのが気に入らなかったのか、男達は武器を構えて少年目掛けて走り出す。
「死ねぇ!」
少年は姿勢を低くしながら、突っ込んでくる男達目掛けて走り出す。
男達の中央に来ると、足払いをしていく。
「うおっ」
間抜けな声を出して転ぶ男達。
数人はそれによって壁に頭をぶつけて気絶をしたようだ。
少年は着ぐるみの怪我の様子を見に行く。
特別な機械で診てみると、出血は多いものの命に別状は無いらしい事が分かった。
「怪我人確認。迎えに来て」
「ジジッ……了解……」
そこへ後ろから影が出来て、男が武器を振り上げる気配がした。
少年は、両膝のジッパーからそれぞれ鉄パイプを取り出して、振り向きざまに男の攻撃を受け止める。
「もしかして、当たりか?」
男は舌なめずりをして、更に攻撃を繰り出す。
男が刀を振り下ろし、それを受け止めた鉄パイプが音を立てて切れると、少年は後ろに引き、右腕のジッパーから刀を出して構えた。
「ビンゴ!」
嬉しそうに、攻撃を繰り出していく男と、それをいなしながら攻撃を繰り出していく少年。
リーチの差のせいか、少年の体には無数の傷が出来ていく。
男の体にも多少の傷は出来るものの、少年には部が悪い様に思えた。
しかし、一瞬のスキをついて男の懐へ潜り込んだ少年は、刀の刃の向きを変えて男の腹に渾身の一撃を喰らわせた。
よろめいて倒れ込む男。
少年は、男の手元に落ちている刀を拾い、男達を拘束して、壁にもたれ掛かる様に座り込んだ。
その体の傷からは血が滲んで、白いパーカーやズボンを赤く染めていく。
幾分か少年の体は縮んだ様にも思える。
「待たせたな」
足音と共に現れた、少年の仲間の男達は、拘束されて気絶している男達を護送車に乗せ、怪我人を救急車に乗せると、
「大丈夫か?」
と少年を見た。
少年は、脂汗をかいていたが、
「これ位大丈夫だよ」
と言うと、その背中のジッパーが開き、着ぐるみを脱ぐ様にそこから同じ服装で傷の無い、身長が一回り以上大きな姿で現れた。
「本当に、どうなってるんだ?お前のその体は」
驚く男達をよそ目に、大きくなった少年、否、青年は、服のホコリを払い、
「企業秘密。次行くから、後始末宜しく」
と言い、その場を去って行った。
「ジッパー……生きる都市伝説か……」
男達は、青年の去って行ったビルを見上げて、ただ溜め息を吐くのだった。
はじめましての方も、そうでない方も、読んで下さりありがとうございます。
書き始めてから、結構経って書いたので、上手く書けてるかどうか不安ですが、自分的には面白いです(笑)
続きも頑張って書きます!
では、次の作品でお会い?しましょう。
ここまで読んで下さりありがとうございました。