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初めての作品で至らぬ所ばかりですが、よろしくお願いいたします。
「苦い…苦いわポーラ」
「あら、いつもと同じなんですがねぇ…煎れ直しますわ」
「いや、いいけど…」
澄んだ琥珀色の液体はこんなにも美しいのに、口に入れると途端にじわじわ苦味が広がる。罠ってきっとこういう感じだ。美しいものには刺がある。
「わたしが弱ってるからってここぞとばかりに痛め付けようというのね、酷い茶葉だわ」
「本当ですねぇ」
背後でカラカラ適当な相槌を打ちつつも、ポーラは新しくお茶を煎れ直してくれた。途端に芳醇な香りが部屋に漂う。受け答えにさほど重点を置いていない以外は、若いのによくできた侍女だと思う。
「しっかし、なんで返事来ないのかしらね!」
「…あぁ、ええと、シュタイン家のバートン様でしたっけ」
「それは前の前! 今はテーラー家のエリック様なんだけど…お仕事お忙しいのかしら」
「お嬢様のお相手は目まぐるしくて覚えられませんわ…」
嘆息するポーラに、にこりと頬笑む。
「だって、飽きちゃうもの」
わたしは恋が好きだ。
好きでもない男に言い寄られて、断ることに心を痛めるやり取りが、わたしは何より楽しい。男は存外ちょろくって、無邪気で初心なふりをして微笑めばみんな簡単にわたしに堕ちる。
でも持っていないものに飢えているだけで、手に入れたものに興味なんて無いから、ポーラの言う通り相手はコロコロ変わってしまう。
きっと恋は使い捨ての娯楽品なのだ。
「あ、でもエリック様なら今夜の夜会に来られるんじゃありません?」
「そうだけど~…恋文が欲しかったのよ…」
「まぁ、強欲な乙女心ですこと」
クスクス笑うポーラに、口を尖らせる。
笑うたびにキラキラ光る瞳は、エリック様と同じ海の色だ。この間彼に情熱的な口づけをされたとき、潤む瞳を見てポーラを思い出した。
だけど、これは何となく秘密。
ポーラに子供扱いされるのは嫌いじゃないけれど。
「…これを飲んだらドレスに着替えるわ」
「今夜のドレスは何色に致しましょう?」
「…意地悪なポーラ。一択よ」
飲みきっちゃおうと煽ったお茶はやっぱり苦くて、仰け反った拍子に髪が肩から滑り落ちた。長い長い烏の髪は、わたしの自慢。
「ええ、バイオレットお嬢様に一番お似合いの色をご用意致しますわ」




