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一般人でも順応しなきゃね  作者: モビ
プロローグ:不可思議は時に唐突に日常を壊す
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説明を受ける佐藤さん

説明回ですね

『クロ』達の様子を影から覗いてみる。どうやら俺を探しているようだ。一人が突然叫び出す。


「来訪者よ、出てきたまえ!悪いようにはせん!出て来ないならこのまま元の世界に送り返すのみ!さあ出てきたまえ!」


 …あれ?思ったよりも話が通じる?でも騙されて出て行く俺ではないのだ。ふははは。

 後輩が話していた夢、ここはまさに同じ世界である可能性が強い。だとすると、後輩が走って逃げたのはこいつらが相手だったからだ。後輩は危害を加えられた訳じゃないが、謎の呪文を唱えられたって言ってたな。見つからないに越したことはなさそうだ。見つかったら…?なんか怖いよね。というか元の世界に送り返すって、その呪文かなんかで夢から覚められるって事だろ?


「気配は感じておるのだ、近くにいるのはわかっている。出て来ないならば送り返すのみ。だが、お前は今までのものとは様子が違う!少し話をせんか?決して悪いようにはせん」


 ふむ。交渉を望んでいるのだろうか?しかし、こちらに取引材料になるようなものは何一つない。出て行ってやっぱり嘘でした〜とかだったら嫌だしな。むしろこのまま放っておいても送り返してくれるならその方が都合が良いか。


「わかった。やっぱり送り返すのは止めよう。出てきてくれれば元の世界に送り返そう。もし出て来ないならば、誰にも見えず協力者も得られないこの世界で、情報もなく一人で生きて行くが良い」




 …え、なんか条件変わったぞ?まるでこっちの心を読んでるみたいで気持ち悪いな。現状こっちに拒否権はないって事なのか。

 なんかここから帰る事ができないような事を言ってるし。まずいな、出て言いた方が良いかな?それにこちらの状況というか、情報をある程度持ってるって事なのか?考える時間が欲しいんだが…


「10……9……8……な「うわーー!わかった、わかったよ!!」」


 くそ!カウントダウンで焦って飛び出ちまった!土壇場で冷静になれない俺のバカ!

 物陰から出て声を出した俺を、振り向きながら確認する黒ローブの男。少し驚いた顔をした後、こちらへ向かってくる。残りの二人も同様だった。

 心臓がやたら早く鼓動する。三人とも何に驚いている?集まって相談し始めたし。


「やはり…しかし存在が薄いな。よく目を凝らさないと見えづらいぞ」

「そうだな。やはり出てきてもらって良かった。ギリギリだが間に合いそうだ」

「でも一度クライに会ってもらった方が良いよね?森から出てきたんだし」


 口々に何か言っているが、情報がなさすぎてなんの事かわからん。クライとかいう固有名詞が出てきたが、村長かなんかかな?その割には随分フランクに呼んでいるようだが。そいつに会わせて、一体何をされるんだろう。


「まぁいい。状況に戸惑っているようだし、とにかくまずは屋敷へ行くか」


 さっき交渉?してきた奴がそう言うと、残りの二人が頷く。リーダーなのか指揮権を持ってるんだろうな。

 三人とも背はそれほど高くない。やや前かがみになってるからだろうか、170cmの俺より少し小さく見える。ちなみに後輩は185cm。ローブの人はそんなに背が高くないって言ってたが、お前がでかいだけじゃねーのか?


 声から察するに、一人は若い女だ。リーダーが一番年齢が上っぽいが、全員顔はまだ見えない。もう一人の男は結構がっしりした体型のようで肩幅が広く、ローブ越しでも背中の筋肉の隆起が見える。この筋肉で殴られたらひとたまりも無いな。やっぱり殺されちゃうのかな?


 そんな事を考えていると、リーダーが手をこちらに向けてお辞儀をした後、手のひらを前方へゆっくり流した。まるで「こちらへ」と言っているようだ。そのまま歩き出すリーダーに少し離れてついて行く俺。さらにその後ろに男と女の黒ローブ。囲まれた状態で向こうの方に見える少し大きめの家へと向かった。




「まずは自己紹介しておきましょう。私はドボルと申します。この村で村長補佐をしております。」


 建物に着き、リーダーに応接室に案内された。残りの二人は別室へ向かったようだ。リーダーは俺にソファーへと腰掛けるように言うと、自身も正面のソファーに座りながら自己紹介を始めた。同時にローブを脱いで顔を見せてくれる。彫りの深い白人のような端整な顔だが、日本人のような面影も感じる。ハーフかな?ただ白人よりは青白い気がする。血色が悪い…のとも違うか。髪は深い藍色、それからよく見ると耳が長い。先が尖っている。現代人にこんな髪や耳の者はいない。まさかエルフか!?


「…違いますな。エルフではありません。それにハーフでもございませんよ」


 違うのか。でもファンタジーとか詳しくないし、人種って他になんかあったっけ?なんか変な顔されたし間違えるのも良くないか。

 …あれ、俺いま思った事を口に出していたか?


「いや、出されてはおりませんでした。しかし私には聞こえるのです。だから、嘘やごまかしはききませんし、言う必要もございません。わかりますか?」


 …まずいな、何考えててもばれちゃうのか。そんなやつにあった事ないから本当かどうかわからんが、夢ならなんでもありってか?実際読まれているし、怖いな。敵か味方かわからんうちに信用は出来ないが、とりあえず何をされるかわからんのだし、一応の礼は失さない方が良策か。


「ではこちらも自己紹介を。私は佐藤康雄と言います。正直な話、全くいまの状況がわからないので、何を聞かれてもわかりません。ですが、一つだけ言える事は、ここは私の夢の中か私の知る世界と別の世界かって事ですね。なので出来れば何か知っていれば逆に教えて欲しいのですが」


 ふむ。聞き方が悪かったかな?焦って上から目線の言葉にも取れるような喋り方になってしまった。勘違いされなければいいのだが…


「ここまでの喪失とは…大丈夫です、勘違いはしませんのでご安心下さい。説明もいたしますがただし!」


 彼はそう言うと静かに息を吐いて少々威圧的に


「覚悟していただきます」


 そう言った。

 覚悟?なんの覚悟?やっぱり俺死ぬのかな?知らぬ間に体が震えている。




 そこからの話はとても長かった。自分の中でも整理をするために要約してみるか。


 まず、現在自分の知っている事を全て話してみた。すると足りない情報を埋める形で説明をしてくれた。

 ここは日本で言うところの『異世界』で間違いないらしい。俺は帰ることができるようだ。と言うのも、実は俺や後輩は実体ではなく、この世界では「亜実体」と呼ばれるものだそうだ。肉体ごとの送還はかなり難しいらしいが、亜実体はエネルギー体なので、比較的送還しやすい。とは言え、普通に物に触れる事もできるし、何かされれば影響も受ける。送還呪文とかね。見た目も普通と変わらない。俺の存在が薄いっていうのはその亜実体が薄くなっているという事。


 亜実体はその人間が持つ生命エネルギーを実体化させて作る、かりそめの体。その人自身が元来持っているエネルギー量でできる事も変わるらしく、たくさんのエネルギーがあればその分強くなるよって感じかね。俺の場合は、そのエネルギーが尽きかけていた為、呪文などの影響を受ける事はできるが、かなり姿が見えにくくなるほど密度が薄くなってしまっており、魔術師や錬金術士(この世界には居るらしい)のような修練を積んでエネルギーを無意識下でも感じる事が出来るようにならなければ見えないらしい。生まれつき見える者も出るらしいがそれは稀だとか。

 ちなみに『クロ』ってのは『黒ローブ』の通称らしい。この世界の魔術師や錬金術士のようなエネルギーの扱いが卓越した存在の総称のようだ。


 …つまり俺はオバケってことか?過労でエネルギー量が減ってオバケってシャレにならんがな。

 でも杖ついているときも見えてなかったはずじゃ?杖や足にはねた泥は見えるのでは?と思って聞くと、亜実体が持っているものは大きさにもよるが、亜実体が触れている限り、共に見えなくなるか認識し辛くなるそうだ。だから意識すれば杖や泥は見えていたかもしれないが、認識しづらい為気づかなかったと。


 それから後輩について聞いてみる。

 10日ほど前に何者かが現れたから、それではないかと。でも後輩は今朝見た夢について話していたので違うんじゃ?と思い、人相とも照らし合わせて再度聞いてみたが、間違いはなさそうだ。

 この世界にはしばしば、俺の世界や違う異世界から人が迷い込んでくる事があるという。儀式をして転移してくるものがいたり、死ぬ前の世界の記憶をもった者が生まれたり、どういう条件かは謎だが、奇跡的な確率の条件を揃えたものが転移したり…様々だとか。人によっては二度三度来る者もおり、そういう者に聞く限り、時間の流れ方が世界によって違うんだとか。

 後輩が現れた時は、意識しなくても見えるがなぜか透き通ったような体だったそうな。そりゃいきなり透き通ったお化けみたいなのに声をかけられりゃビビるわな。それでこいつらを呼ばれた訳か。ただエネルギー量が少なかった為、交渉などせずに呪文で送り返してあげたんだと。良かったね。


 …あれ、俺は?エネルギー量少なかったんじゃないの?

 そこで覚悟の話になる。


「先ほど覚悟して頂くとお話ししましたね?あれは貴方様のエネルギーの質が他とあまりに違うからなのです」


 そう言ってきたドボルはスッと立ち上がり、窓から外の様子を見る。立ち居振る舞いはビシッとして紳士的だ。


「貴方様が物陰から出てきた時、直接見ることですぐ気づきました。貴方様のエネルギーはあまりに薄く、感知しづらかった。だが感知しづらい理由はそれだけではなかったのです。」

「…というと?」

「貴方様は恐らくあの方の生まれ代わりなのです。精密に調べたわけではありませぬが、恐らく間違いない。…この世界ではなく、そちらに生まれていたのですな。記憶もなくし、力も失い…そこまでこの世界をお見捨てになられてしまったのか」

「あの…話が見えないのですが」

「…あぁ、そうですな。貴方様は元『魔王様』なのです。我らが魔族の長よ」




 あれれ?変なことになってきたぞ?

…佐藤さん、少し強くなれる芽が出ましたw

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