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一般人でも順応しなきゃね  作者: モビ
プロローグ:不可思議は時に唐突に日常を壊す
3/16

しかしかこまれてしまった!

 もう休憩してから30分は経つか。ようやく向こう側が明るく見え始めた。森の端が近いのだろう。

 距離にするとどれだけ歩いたんだろうか?前にダイエットがてら長距離を歩いてから自宅のPCのウェブマップで確認した事がある。その時は2時間くらい歩いて12キロだったな。今日は道無き道だし、革靴だから半分くらいのスピードだとしても7キロ半くらいは歩いてる事になる。その割には足は痛くないし疲れてない。なんか妙な感覚だわ。


 それから10分くらい歩いただろうか?ようやく少し開けた場所に出た。

 建物が少しと人も見える。それら全体を囲むような柵と門らしきものも見えるな。今立っている場所は少し小高くなっていて、そこを遠くから見下ろしている感じ。目の前の坂を下れば500メートルくらいでそこに着けるだろう。

 ふむ、村といえば村だな。ただ自分の知ってるような、広大な田んぼや畑があって、家が一軒一軒離れた場所にあるような感じではなく、密集している。もしかすると農作物よりは狩猟の方がメインなのかもしれないな。だとすると銃とかで撃たれたりしないだろうな?


 とりあえずは後輩の話を思い浮かべて近づかず、村から離れた木の陰から様子を見る。撃たれても嫌だし。




 小一時間見ていたが、遠すぎてよく見えないし、かと言って何か起こるはずもなく、ただいたずらに時間が過ぎた。このままでは埒があかんな。近づくか?


 意を決して動く事にする。動くとなれば時間は惜しいので、少し早歩き気味に進む。徐々に門が近づいて見える。

 柵は簡素なもので、侵入を拒むためのものと言うよりは、ここから村ですよという敷地を表すためにある感じか?門の前に門番や見張りがいる訳ではないのだが、門を入ったすぐ近くに家らしきものや店みたいなものも見える。人もいるが、格好は結構古そうな…というか、皮や布を継いで作ったようなものだ。日本国内ではまず見かけないようなもの。そんな人達がいるので、近づくにあたり警戒されないように動きは出来るだけ「弱々しく」見せながら歩いてみた。

 だって明らかに場違いな格好のやつが元気に大手を振りながら近寄ってきたら怖いでしょ?這々の体で弱そうだったら警戒よりも、どうしたの?→あれ、格好が変→とにかく介抱してやるか?の流れが期待できる。いや、そうなれば良いなっていう希望的なものだけど。

 そういえば後輩はなんて言ってたかな?いきなり近づいて声かけたのかな?まぁ彼は彼だし、俺は俺でうまくやってみるさ。見てろよ俺の演技力!演技なんてしたことないけど。




 はい、予想外でした。皆こちらを一瞥もしない。何、何で?無視しなくても良いじゃん。せっかく足をガクガクさせて、落ちていた太めの木の枝を杖代わりによたよた歩いて村に侵入したのに誰も見てくれない。

 急に恥ずかしくなってきた。もう良いや、普通に歩こう。


 …しかし誰も見てくれないな。無視しているっていうよりも気がついてないような感じ。なんで?ちょっと近づいてみるか、怖いけど。一応物陰に隠れてればいいか。


 その前に周りを見渡してみる。建物は後輩が言っていたような、木で出来ているログハウスみたいなもの。長野にスキーに行った時に見たことがあるようなやつ。

 感心したと彼は言っていたが、それも納得できるな。だってクギを使わずに作ってあるんだもの。それとも普通はこういう風に作るものなのかな?俺も中に入ったり近づいたりしたことがあるわけじゃないから詳しくはわからないけど、クギを使わずに作れるものなんだね。ちょっと感心というか感動というか。


 それからそっと隠れながら人を見てみる。何やら会話している声も聞こえるが、日本語っぽいな。あまり近寄りすぎて追いかけられたら堪らんので少し離れてはいるが、単語単位で聞き取れる。

 家の前で果物だか野菜だかわからないものを売っているようだ。それを買っている客と会話をしている。…4バートじゃ高いんだって。バートって通貨単位かな?商品の名前は聞き取れなかったが、聞いたことない感じだった。推察するに行商人か何かが売りに来てるのかな?


 集中して聞いていたら、さっき持っていた杖代わりの木が倒れてしまった。

 あたりにカラーンと乾いた音が響く。

 その瞬間あたりにいた人が一斉にこちらを振り向いたので驚いてしまった!なんだよ、見えないんじゃなかったのか!?少したじろぎ、数歩下がってしまった。


 …だが様子がおかしい。やはり俺は見えていない様子だ。だが、杖は見えているようで、近寄ってきて何か話している。

 用心しながら近づき、話を盗み聞く。


「つまり、いつの間にかあった木が倒れたってことか?」

「…そうだな、また出たかもしれん。一応『黒』たちを呼んでおくか?」

「ああ、それが良い。その方がそいつにとっても都合が良いだろう」


 そう言った後、一人が村の奥の方に駆けて行った。

 …「クロ」?やっぱり誰か呼ばれるのか?でも見えてないなら隠れる必要はないのか?だんだんわけわからなくなってきた。

 念のため人気のない端の方に行き、物陰に隠れて様子を見ていよう。確かに村から離れても良い。だが後輩の場合は村人に見えていたっぽいし、自分から声をかけてせいで見つかったのかもしれない。

 楽観視は出来ないが、状況が違う。少し様子を見て、その「クロ」とかいうのがヤバければ逃げりゃ良いだろう。


 すぐに黒いローブを着た人間が3人やって来た。…思った以上にやばそうじゃん!

 さっきの会話からローブの奴らが特殊な奴なのはわかるし、万が一俺のことが見える奴なら何をされるかわからん。そっと逃げようにも、3人のうちの1人が立っている位置が悪い。出口である門のすぐそばなのだ。おいおい、逃げようにも逃げられないではないか!まずったぁ!!


 焦るな…とにかく今は我慢だ。今動いて失敗する場面じゃない。でもなんとかして機を見て逃げなければ!

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