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おこたたん

作者: 碧蜜柑

あたしおこた


みんなを温めるおこた


みんなあたしのとりこ


誰もあたしの誘惑からは逃れられないの


でも最近あたしにライバルが現れたの


ハゲロンとかなんとか・・・


違うわハロゲン!


ヒーターもストーブもエアコンもみんな共存してたのよ


あいつ力業


じりじり暖めるらしいのよ


変な名前して生意気だわ


あたし悔しくって


夏の倉庫でちょっかい出してやったの


そしたらあたしの脚を折ったのよ!?


信じられない!


秋深くなって倉庫があいてご主人はビックリよね


あたしは当然修理に出されると思ったわ


『ああ・・・今年は物入りだしこたつは我慢するか』


えぇ!?


そのままあたし倉庫にしまわれてハロゲンが出されたの


どうしてよ!


あたしご主人が小学生の頃からいるのよ?


何度修理に出されても私は冬を温めてきたのよ?


あんなハゲロンだかハロゲンだかわからないやつに地位を奪われてたまるもんですか!


あたしは声をあげたわ


今まで人の前で声なんてはしたなくてあげたことなかったけど


私の誇りを汚されたら黙っていられないの


『ねえ、あたしを忘れないで!あたしとの思い出を忘れないで!』


そしたらご主人は近づいてきてこう言ったの


『変な音がする。もう寿命かな・・・』


ちょっと、ちょっと待って!


あたし紙を貼られてごみ置き場に捨てられたわ


人間はみんなそう


新しいものが好きなのね


仲の良かった冷蔵庫や炊飯器たちもすぐに新しい子と代わったもの


あたしももうおわりね


泣きながら寒空を見ていたら


汚い服を着たおじさんがあたしに近寄ってきたの


『なんだまだ使えそうじゃねーか』


おじさんはあたしを抱えて古びた平屋につれてきたの


古びているけど片付いていて質素でも品がある部屋だったわ


おじさんはあたしに電気を通すとにっこり微笑んだの


『明日、脚を直してやっかんな』


次の日、約束通りおじさんはあたしの脚を直してくれたの


あたし嬉しくて泣いちゃったの


おじさんはわかってるみたいにこういったわ


『物は使えるうちは最後まで使ってやんないとな』


あたし、本当に嬉しかった


おじさんが・・・汚いおじさんが・・・王子さまに見えたわ


あたしこれから心を入れ換える


傲慢で意地悪で恨みがましい性格直す


ねえおじさんあたしをずっと側において


壊れてしまうまでずっと


おじさんはあたしを部屋に運び嬉しそうにわたしで温まった


それから長い年月が過ぎおじさんはなくなった


寒い夜、あたしの温もりの中で


一人きりでなくなったと人々は言い


一緒に住めば良かったと親族は泣いた


でも、おじさんは不幸じゃなかったわよ?


いろんなものを拾っては直し大事に使って


最後にはみんなに看取られたもの


みんなおじさんが大好きだったわよ




その夜おじさんの家の家電は一斉に音をとめた


家電はとっくに寿命だった


ただおじさんのために動いていた


ただおじさんと一緒にいたくて動いていた




ねえおじさんあたしたち頑張ったよね?


天国では一緒に話ができるかな?


あたしたちおじさんと話したいこといっぱいあるの


おじさんと同じ天国に行けるかな?


また会いたいな




END


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― 新着の感想 ―
非常に良い話。 ただ投稿ジャンルを童話にしてれば、もっと数字伸びたかもと老婆心。
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