つみびと。
「あれ?」
銀行の口座を見ると、一万円が増えていた
ごはんのあと、部屋に寝に行くお父さんをちょっと時間をおいて追いかける
ひょこっと洗面所を覗く
「お父さん、お金ありがとう あれ…」
「ああ、旅行するって行ってたから」
「えっ、いいの…?」
お母さんがドアをあける
「何、どうしたん」
お母さんがやってくる
「えっ、いや別に」私は答えて、お父さんは部屋に戻っていく
「なんやったん?気のせい?」
「うん」
お母さんは隠し事されるのと仲間外れにされるのが嫌いだ
「じゃあ、何話してたん」
「えっと…なんやっけ 旅行のこと」
「あぁ」
お金もらったって言ったら、嫌味何十分コースがついてくる
嘘は苦手だ 下手だ 苦しい ちっちゃなことでも胸がいっぱいになる
テレビがやってる
いつもだったらごはんが終わったら片付けしてすぐに自分の部屋に戻っていくけど、今日は少し機嫌を直したくてテレビを一緒に見るふりをする
お母さんの機嫌をとってる時
自分はごみくずみたいだって情けなく感じる
四つん這いで床を舐めてる気分になる
楽しくないことに笑う、興味がないことに食いついてお母さんが機嫌を損ねないようにしてる
自分はどんな顔をしてるんだろう
(面白くないくせに
愛想笑い…)
(だってしょうがないじゃない
お母さんが機嫌悪くなると不安なんだもん)
(ごみくずだね 情けない)
(私これで合ってるの?)
(嫌いなくせに、白々しい)
(勝手にお母さんの求めるものを演じようとして、疲れて嫌いになるの?なんでも相手のせいにするの?楽でいいね)
(…)
お母さんといるととても苦しい
何をしても心の声に責められる
-ここまで書いて、強烈な眠気に襲われて寝てしまった
お母さんとのことや、自分のことで悩むとめちゃくちゃ消耗する
私はお母さんの亡霊に取りつかれてる
亡霊はあまりに強烈で、私の一部となって離れられない
一生ひとりになれない 一生自分を生きられない
誰にもわからない、私だけの十字架を背中に背負って生きてる
生まれながらの、死ぬまで罪人